研究課題
風力・太陽光などの再生可能エネルギーを蓄え、消費地に安定的に供給する技術の開発は、エネルギーの有効利用に向けた重要な課題である。一つの方策として、これらの再生可能エネルギーから得られる電力を用いて、アルコールやアンモニアなどのエネルギーキャリアを電解合成し、貯蔵・輸送する手法が考えられる。エネルギーキャリアを電解合成するためには「小分子を基質とした多電子酸化還元反応」に対して、常温・低下電圧で高選択的に駆動する電極触媒の開発が求められる。本研究では、分子性金属錯体を対象に、高効率・高選択的な電気化学的物質変換反応を促進する新奇電極触媒の創出を目指している。具体的には、生体中の酵素活性中心をヒントに、(1)多電子プール能、(2)フレキシブル骨格、(3)基質の捕捉・活性化という3つの機能を集約した異種金属多核錯体を研究開発の中心に据えた。平成27年度は、平成26年度に引き続き、上記(1)~(3)の機能を有する新奇な異種金属多核錯体を合成した。合成した異種金属多核錯体の同定には、単結晶X線構造解析、ESI-TOF MS、元素分析、NMR、メスバウアー分光等の測定手法を用いた。更に、pHや溶媒など、様々な条件のもと電気化学測定の一つであるサイクリックボルタンメトリー法を用いて、合成した異種金属多核錯体の酸化還元挙動を調査した。また、同じくサイクリックボルタンメトリーにより、これらの異種金属多核錯体に対して、小分子の多電子酸化還元反応の触媒として機能するかを調査した。触媒として機能することが分かった異種金属多核錯体に対しては、定電位電解を行って生成物の分析を行うとともに、ボルタモグラムの波形変化から触媒活性を定量的に評価した。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的である異種金属多核錯体のうち、複数の化合物の合成に成功し、その触媒活性の評価を行えたため。
平成27年度までに得られた知見をもとに、新しい異種金属多核錯体の分子設計を行い、触媒の分子構造の最適化を目指す。
異種金属多核錯体の合成が当初予定していたよりもスムーズに進み、試薬やガラス器具などの合成用消耗品を節約して使用することができた。また、本研究に関連した出張を平成27年度に行っておらず、その分の旅費も節約することができた。
異種金属多核錯体を合成するための試薬やガラス器具、電極触媒機能評価用の消耗品、研究成果発表の旅費に使用する。
すべて 2016
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Nature
巻: 530 ページ: 465-468
doi:10.1038/nature16529