研究課題/領域番号 |
26620160
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
正岡 重行 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 准教授 (20404048)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
風力・太陽光などの再生可能エネルギーを蓄え、消費地に安定的に供給する技術の開発は、エネルギーの有効利用に向けた重要な課題である。一つの方策として、これらの再生可能エネルギーから得られる電力を用いて、アルコールやアンモニアなどのエネルギーキャリアを電解合成し、貯蔵・輸送する手法が考えられる。エネルギーキャリアを電解合成するためには「小分子を基質とした多電子酸化還元反応」に対して、常温・低過電圧で高選択的に駆動する電極触媒の開発が求められる。 このような背景のもと、本研究では、分子性の金属錯体を対象に、高効率・高選択的な電気化学的物質変換反応を促進する新規電極触媒の創製を目指した。具体的には、生体中の酵素活性中心の構造をヒントに、(1)多電子プール能、(2)フレキシブル骨格、(3)基質の捕捉・活性化という3つの機能を集約した異種金属多核錯体を研究開発の中心に据え、新規電極触媒の開発に取り組んだ。平成28年度は、平成27年度までの研究に引き続き、上記(1)~(3)の機能を有する新規金属錯体として、4d遷移金属イオンと3d遷移金属イオンの両者を一分子中に含む金属錯体を合成した。これらの金属錯体の同定には、単結晶X線構造解析、ESI-TOF-MS、電素分析、NMR、メスバウアー分光法などの測定手法を用いた。次いで、サイクリックボルタンメトリーを測定し、合成した金属錯体の酸化還元能について評価した。さらに、基質存在下においても同様にサイクリックボルタンメトリーを測定することにより、合成した金属錯体が小分子の多電子酸化還元反応に対して触媒活性を有するかどうかを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はおおむね計画通りに進んでいるが、一部の目的化合物については、高純度の化合物を大量に合成することができず、電気化学的機能評価を行うための十分な量の試料を得ることができなかった。結果として、当初の計画に比べ研究の遂行が若干遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた基礎的知見をもとに、小分子の多電子酸化還元能を促進する分子性触媒構造の最適化を行うとともに、高効率な物質変換が可能な電極デバイスの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的とした金属錯体の合成を行うにあたり、当初確立した合成手法は試料の大量合成にむいておらず、電気化学的機能評価を行うために必要な量を合成することができなかった。そのため、当初の合成手法の見直しおよび新規な合成手法を確立する必要が生じた。結果として、当初の計画に比べ研究の遂行が遅れ、次年度以降も引き続き本研究を遂行する必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
主に、金属錯体の合成に必要な試薬、ガラス器具等の消耗品、および電気化学的機能評価に必要な電極等の消耗品に使用する。
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