研究課題
本研究ではDNAナノファイバを熱処理し、発光特性に優れたカーボンナノワイヤへ変換し、これを広帯域においてエネルギー変換可能な光電変換材料として応用することを目的とする。発光性カーボンナノワイヤの先駆体となるDNAは生体分子であり、毒性は低く環境にやさしい材料である。本研究の発光性カーボンナノワイヤの作製法は特別な機械装置の使用を伴わず、一般的な研究設備を有する施設で実行可能で、きわめて環境負荷の少ない次世代の光電エネルギー変換素子の開発技術となる。平成26年度はDNAナノファイバの熱処理により調製された発光性カーボンナノワイヤの広帯域における発光特性を明らかにする。PDMS上に作製されたDNAナノファイバをガラス基板に転写印刷し、熱処理することで発光性カーボンナノワイヤへ変換した。ガラス基板上の発光性カーボンナノワイヤを原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡そして光学顕微鏡を用い観察した。熱処理温度は250℃で得られたカーボンナノワイヤの発光強度が最も大きくなる事がわかった。また発光性カーボンナノワイヤへの変換の様子を共焦点レーザーラマン顕微鏡により観察した結果、発光の発現は炭素化と関係する事が分かった。発光性カーボンナノワイヤ中で1次元配列した銀ナノ粒子はプラズモンカップリングによる強い局在プラズモン共鳴を示し、この現象を利用し発光特性を向上させる事ができた。特に520nmの励起においては発光強度が10倍程度向上させる事ができた。
2: おおむね順調に進展している
発光性カーボンナノワイヤの作製技術は、現時点で十分再現性があり、顕微鏡下における分光測定を容易にし、現有設備ににおける詳細な光学特性の検討が行えたため。局在プラズモン共鳴を最適化した金属ナノファイバ用いる事で、500-600nm付近の発光特性を増大でき(最大10倍)、これにより可視域の広範囲において、カーボンナノワイヤの発光特性を向上する事ができた。
作製されたカーボンナノワイヤの光電変換特性を検討する。この目的のために、くし型電極パターン上に金属ナノファイバを転写印刷し、これを加熱処理しカーボンナノワイヤが電極間ギャップに配置したものを得る。これにさまざまな波長の光(400-650nm)を照射して、電流-電圧変化を測定する。現有設備においては数ピコAレベルの測定が可能である。また温度制御下での厳密な測定が要求される場合、当研究機構の別グループの測定装置の使用が可能である。また転写印刷を同一くし型電極上に複数回繰り返す事で、カーボンナノワイヤ密度を増加させ、電流値の増大を試みる。当初購入予定のソーラしゅみれータは予算の減額により購入は困難であるため、他グループの装置を使用して行う。
追加の試薬購入が必要でなくなったため。
次年度の消耗品代として使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
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