研究課題/領域番号 |
26620164
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上木 岳士 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00557415)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン液体 / BZ反応 / 自己組織化 / ブロック共重合体 / 散逸構造 / 活性化エネルギー / プロトン性イオン液体 |
研究実績の概要 |
化学振動反応(BZ反応)の寿命、周期、活性化エネルギーに及ぼす水和プロトン性イオン液体(PILs)のカチオン構造の効果を系統的に検討した。PILsのアニオン構造は硫酸水素に固定し、汎用脂肪族アミンおよびアンモニアをカチオンの前駆構造に選択した。 結論としてカチオン構造中に含まれる炭素数が4以下の飽和アンモニウムを選択したときに振動反応の顕著な長寿命化効果が発現した。親水的なカチオン構造ではBZ反応の中心金属触媒であるRu(bpy)3と疎水性相互作用に基づく、電子授受反応の阻害効果が生まれないためと結論づけられた。さらに水和PILs中のBZ反応周期は従来の無機強酸(過塩素酸、硫酸、硝酸)水溶液中におけるそれと比べて弱い温度依存性を持つことが明らかになった。アーレニウス解析により、水和PILs中における振動反応の活性化エネルギーは従来系よりも20~30 kJmol^-1程度低かった。水和PILs中のBZ反応素過程においては、アンモニウムカチオン由来のフリーアミンが介在する触媒過程の存在を強く示唆する結果であった。既報においてBZ反応の波形解析から水和PILs中ではプロトン生成を伴う中心金属触媒の再還元過程が迅速化している可能性を指摘したが、今回の解析結果はこの考察と矛盾しないと考えられる。以上の結果は高分子討論会、イオン液体討論会など国内の複数の学会で発表され、反響を呼んだ。学術論文の形にも既にまとめてあり、現在査読中である。 次年度以降は本年度手つかずであったPILsのアニオン構造の調査等を通してBZ反応機構に及ぼすPILs構造効果の根源的理解を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プロトン性イオン液体(PILs)のカチオン構造がBZ反応機構に及ぼす影響の詳細を明らかにできたことは大きな進捗である。当初は最終年度にPILs系の振動高分子系への適用を考えていたが、予定を繰り上げ来年度から着手する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定にあったように二年度目はプロトン性イオン液体(PILs)のアニオン構造効果の詳細を検討する。さらに線形高分子のコイル-グロビュール振動や高分子ネットワーク(ゲル)の体積振動を本系の特徴を利用して実現する。最終的にはPILs構造を一成分として有するブロック共重合体を精密合成し、還元剤(有機酸)の添加のみで自律的な機械的振動を生起する新しいソフト材料の形を提案する。
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