プロトン性イオン液体の特にカチオン構造が振動反応に及ぼす影響を調査した。アニオン構造を硫酸水素に固定して各種飽和アルキルアンモニウム系プロトン性イオン液体を合成した。結論として、1.炭素数が4以下のアルキルアンモニウムにおいて振動反応の顕著な安定化効果が生まれる。2.周期の温度依存性からArrheniusプロットを作成し、振動反応の活性化エネルギーを求めたところ従来の無機強酸をプロトンソースとした場合よりおよそ20~30 kJ/mol程度低くなることがわかった。1.に関しては中心金属触媒とアンモニウムカチオンとの間に働く疎水性相互作用によって円滑な電子移動反応が阻害されていると結論付けられた。2.に関しては水溶液中のプロトン性イオン液体の平衡反応の結果、発生するフリーアミンが金属触媒の再還元プロセスでプロトンアクセプターとして触媒的に作用するため、反応の活性化エネルギーが低下すると予想された。さらに本年度は振動反応の詳細な波形分離解析により、長年にわたり謎であった3.プロトン性イオン液体系において、なぜ強酸系より強い反応基質依存性が現れるかという問題を分子論的に説明した。以上の内容はアメリカ化学会・物理化学系専門誌Journal of Physical Chemistry B誌に投稿、採録が決定した。本系の応用展開である、化学エネルギーを機械エネルギーに直接変換する系は昨年度までに実現されており、現在投稿準備中である。
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