本件研究では、二酸化炭素(CO2)の光還元が可能な膜状触媒の開発を目的に、層状半導体とCO2還元が可能な金属錯体との複合化について検討を行った。研究期間中、次に示す3つのテーマを立案し、これらを同時並行的に実行することで以下の成果を得た。 1.層状半導体の透明薄膜化と触媒機能:金属錯体と半導体光触媒をナノレベルで複合化するため、層状半導体に着目した。層状半導体の一種であるチタニアナノシート(TNS)を500℃程度の低温処理することで、基板への固着性に富んだ透明薄膜が得られることを見出した。この膜を、金属イオン種と反応させると、金属種が層間に取り込まれることを明らかにした。この結果は、本手法で作成した薄膜が、イオン交換特性を有し、様々な化学種と複合化が可能であることを示している。金属イオンを還元した金属ナノ粒子/層状半導体薄膜の合成に成功した。この複合体は、様々な光触媒反応を駆動することも見出している。 2.新規レニウム錯体の合成:層状半導体との複合化が期待されるレニウム錯体の合成を行い、錯体末端にフォスフォン酸またはアンモニウム型の置換基を有する錯体の合成に成功した。 3.レニウム錯体と層状半導体との複合化:アンモニウム型置換基を有するレニウム錯体と層状半導体(K4Nb6O17)の透明薄膜とのイオン交換による複合化を行ったが、検討条件下では複合化が達成できなかった。現在、別の手法で複合化を試みている。一方、粉末状のK4Nb6017にフォスフォン酸型レニウム錯体を作用させたところ、複合化が確認できた。この複合体を不活性ガス雰囲気下で光照射を行うと、レニウム錯体の活性中間体である一電子還元種と思われる吸収が確認できるとともに、水素の発生が認められた。一方、CO2下で同様の反応を行うと、COの生成が認められた。これらの結果は、本複合体がCO2還元光触媒として機能することを示す。
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