研究課題/領域番号 |
26620167
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
山田 容子 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (20372724)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機能材料 / 有機電子材料 / エレクトロクロミズム / テトラチアフルバレン / アセン |
研究実績の概要 |
初年度に合成したテトラフェニルテトラセンテトラチアフルバレン(Ph-DT-TTF)にトリフルオロメチル基を導入したCF3Ph-DT-TTFの合成に成功した。CF3を導入することで吸収・発酵スペクトルが長波長シフトし、薄膜のイオン化ポテンシャルは5.2 eVから5.8 eVへと低下した。 一方チアンスレンは2電子酸化することでアントラセンと同様の電子状態を有することが知られている。そこで、ビスアンスラチアンスレンを2電子酸化することでジチアノナセン様化合物が得られるかどうかを検証するためにビスアンスラチアンスレンの合成と酸化挙動について実験および計算により詳細に検討した。その結果、ビスアンスラチアンスレンを2電子酸化すると、ふたつの硫黄原子で架橋されたテトラセンラジカルカチオン2量体が得られることを見出した。これらふたつのラジカルカチオンは分子内でほとんど相互作用することがなく、独立した性質を持つことを、実験および計算により明らかにした。 また、初年度に合成したテトラフェニルテトラセンTTFおよびそのフッ素化物について、FET挙動を調べるためにデバイス作製方法を検討した。本研究は引き続き進行中である。さらに、加熱による構造変化により溶解度をコントロール可能な熱変換前駆体法を利用して、フェニル基を有しないテトラセンTTFの合成についても検討し、引き続き継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に合成したテトラフェニルテトラセンテトラチアフルバレン(Ph4DT-TTF)のフェニル基のパラ位にトリフルオロメチル基が導入された(CF3Ph-DT-TTF)の合成とキャラクタリゼーションに成功し、論文発表を行った。 また当初予定していたジチアノナセン(ビスアンスラチアンスレン)の合成に成功した。エレクトロクロミズムを検討するために、酸化挙動と吸収スペクトルについて詳細に検討したところ、化合物全体に共役が広がったノナセン構造は得られなかったものの、ふたつのテトラセンラジカルカチオンが結合したジラジカルカチオンの構造を有することを明らかにした。ESRスペクトル測定と分子軌道計算により、その物性と電子構造を確認した。これらの結果は期待した結果とは異なるが、研究自体は予定通りに進捗していると考える。 一方、含硫黄芳香族化合物の半導体特性について検討するために、薄膜作成方法を詳細に検討しており、継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、含硫黄π共役拡張化合物についての研究結果をまとめるために、化合物合成に加えて、デバイス作製方法の検討と評価を行う。とくに、テトラセンテトラチアフルバレン及びそのトリフルオロメチル体の電荷移動度については、薄膜作製方法を詳細に検討する。一方ビスアンスラチアンスレンについては、ほぼデータが揃ったので、早急に論文にまとめる。またn型特性あるいはアンビポーラー特性が期待される、末端にイミド構造を有するナフタレンテトラチアフルバレンの合成し、電気特性に対する置換基効果を検討する。
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