研究課題/領域番号 |
26620169
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
前田 壮志 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90507956)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機能性色素 / 分子内電荷移動 / 自己組織化 / 近赤外光 / 有機半導体 / 電界効果トランジスタ / 有機太陽電池 / 分子素子 |
研究実績の概要 |
電子ドナー及びアクセプター成分からなる分子は有機薄膜太陽電池の基本要素を分子内に備えており,ホール及び電子の移動パスを構築できれば,原理的には単一成分で光電変換層とすることが可能である.本研究では,高効率な電荷分離と電荷移動の実現に資する有機電子材料の開発に向けて,卓越した光吸収能と凝集性を示す機能性色素をドナー及びアクセプター成分に持つ分子を設計・合成し,それらの自己組織体の創製に取り組む.本年度はスクアリリウム色素(SQ)とナフタレンジイミド(NDI)からなるダイアド分子の合成と特性解析を行った.遠赤色光から近赤外光領域に吸収を示すSQ前駆体とハロゲン化NDIのパラジウム触媒クロスカップリングにより,SQやリンカーの構造が異なる9種類のダイアド分子の合成に成功した.得られた化合物の中でエチニレン基を連結成分に持つダイアドは,各成分に由来した吸収に加えて,近赤外領域にブロードな吸収帯が見られた.分子軌道計算から長波長領域の吸収帯はSQからNDIへの分子内電荷移動であることが示され,2成分連結が光学特性に及ぼす効果を確認した.また,ダイアド分子の電気化学特性をサイクリックボルタンメトリーで評価したところ,SQの酸化及びNDIの還元に由来するピークがともに観測された.得られたダイアド分子を用いて電界効果トランジスタを試作したところ,p型半導体特性(ホール移動度10-4~10-6 cm2V-1s-1)を示すことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,①ドナー性色素の合成,②アクセプター性色素へのドナー性色素の配置とリンカーの設計,③自己組織化挙動の評価,④有機電界トランジスタによる電荷移動度の評価,⑤有機薄膜太陽電池の試作,の5項目に関して検討する計画である.本年度では①及び②の検討を通して,所望のダイアド分子の合成に成功しており,④に挙げている電荷移動度の評価まで完了していることから,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度では,当初の研究計画に従って③自己組織化挙動の評価,に着手する.具体的には,本年度に得た知見を基に長鎖アルキル基を有する対称性D-A-Dダイアドを合成し,疎溶媒効果等によって自己組織体の合成を目指す.また,光誘起電子移動や自己組織化挙動は分光学的手法とTEM観察等により評価する.さらに,④有機電界トランジスタによる電荷移動度の評価,⑤有機薄膜太陽電池の試作,にも着手し,自己組織化とデバイス特性の相関を明らかにする計画である.
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