本年度は、前年度の結果を受けて、本研究で目的としている新規ポリマー合成システムの中核を成している「SENA粒子」の最適化を行うと共に触媒担持法の検討を行った。また、粒子中で有機反応を行うというコンセプトに基づき、有機顔料の新たな合成法を確立した。
①前年度の検討結果より、コアシェル粒子のシェル部分にはPolyisoprene(またはPolybutadiene)の2重結合が存在していることから、Ene-Thiolクリック反応を用いた触媒担持法の検討を行った。反応条件等を検討した結果、触媒活性を保持しながら粒子表面に触媒担持を行うことは困難であった。
②本研究のコンセプトである、「空間制御された反応場を用いた有機分子の合成」に基づき、新たに有機顔料の合成反応をナノ空間で行うことで、ナノサイズの有機顔料結晶の1段階合成に成功した。 具体的には、化学的・熱的安定性の高い顔料として古くから用いられている金属フタロシアニンを検討対象とした。金属フタロシアニン(PC)は顔料のみならず、色素増感型太陽電池や非線形光学材料等の機能性材料にも用いられているが、金属PCをナノサイズの結晶にすることによって、その光学・電気的特性が非常に向上することから注目されている。従来、金属PCはWyler法やフタロニトリル法を用いて作製されているが、これまでに金属PCナノ結晶を前駆体溶液から直接合成する手法は報告されていない。今回、熱ではなくUV光照射を用いることでナノミセル中で金属PCの合成反応を進行させることに成功し、ナノミセルにより結晶成長を制御された直径数十nmの金属PCのナノ結晶を前駆体から直接作製することに初めて成功した。
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