研究実績の概要 |
本研究では、芳香環の炭素-水素結合活性化による直接的アリール化反応を用いてポリ(1,8-カルバゾール)を合成し、9-位置換基の除去後、イオン認識能を調査する。まず、カルバゾールの3,6-位に可溶性置換基としてtert-ブチル基を導入した。次に、カルバゾールの9位にピリミジン基またはtert-ブトキシカルボニル基を導入して重合用モノマーとした。ジブロモチオフェンやジブロモフルオレン等の共モノマーと等モル比で混合し、直接的アリール化重縮合を実施した。金属触媒(PdまたはRu)と配位子、塩基の組合せを変えて実験したが、高分子量体を得ることはできなかった。この結果は、カルバゾール1,8-位の炭素-水素結合は十分に活性化されていないことを示唆している。比較試料としてStilleカップリングを用いた重縮合で同様のポリ(1,8-カルバゾール)を合成したところ、目的とする高分子量体が得られたため、立体的な因子が重合反応を阻害しているわけではなかった。 そこで他の重合法も試験することとした。3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾールの1,8-位をヨウ素化した後、薗頭反応でトリメチルシリルアセチレンを置換した。シリル基を脱保護してジエチニルカルバゾールモノマーとした。このモノマーとジアジドフルオレン誘導体共モノマーを等モル比で仕込み、銅触媒存在下でクリック重合した。室温でも目的とする高分子量体が得られたため、重合反応は効率良く進行したことを示唆した。
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