研究実績の概要 |
本研究では、芳香環の炭素-水素結合活性化による直接アリール化反応を用いてポリ(1,8-カルバゾール)を合成し、9位置換基の除去後、イオン認識能を調査することを目的とした。昨年度の実験によって、直接アリール化重縮合でポリ(1,8-カルバゾール)を得ることができないことが分かった。そこで、他の連結様式を有するカルバゾールモノマーの反応性を調査するため、直接アリール化重縮合によるポリ(3,6-カルバゾール)およびポリ(2,7-カルバゾール)の合成を試験した。カルバゾール3,6-位の炭素-水素結合が活性化されるため、ポリ(2,7-カルバゾール)はゲル化し、溶媒可溶な高分子は得られなかった。一方、ポリ(3,6-カルバゾール)は溶媒可溶な直鎖高分子が得られることを明らかにした。 一方、アルキンとアジドの付加環化反応を利用してポリ(1,8-カルバゾール)を合成する経路を見出した。カルバゾール9位が触媒である銅イオンと強く相互作用するため高分子量体を得ることは困難であったが、分子量数千の試料は再現性よく得ることができた。得られたポリ(1,8-カルバゾール)はクロロホルム溶液中で394nmに発光を示した。そこで様々な金属イオンおよびアニオンを添加して発光スペクトルの変化を調査したところ、シアン化物イオンを添加すると発光強度が増大した。他のアニオンではそのような変化は起きないため、選択的である。また、鉄イオン、銅イオンおよびスズイオンを認識し、蛍光強度が減少した。特にスズイオンは発光波長の長波長シフトが見られたため、イオン選択性が高い。以上より、合成したポリ(1,8-カルバゾール)はシアン化物イオンとスズイオンを選択的に認識することが明らかとなった。
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