常法に従って前処理したマボヤ被嚢を4 M塩酸中、80℃、8時間、加熱処理した後、遠心分離操作による溶媒置換をもとに精製することにより、水分散性が高いセルロースナノ結晶(CNC)を調製した。得られたCNCは、幅10-20ナノメートル、長さ数マイクロメートルのウィスカー状形態であり、また、天然セルロース特有のI型結晶構造であることを明らかにした。 p-ニトロフェニル基で活性化されたエステル基をもつ低分子モデル基質を用いて、CNCが示す加水分解活性を評価した。基質の高濃度溶液を準備し、ごく少量をCNC分散液に添加し、反応させた。所定の反応時間後、遠心分離操作によりCNCを沈澱させ、上清中の生成物(p-ニトロフェノール)を可視紫外吸収スペクトル装置により検出した。その結果、調製したCNCはモデルエステル基質に対して加水分解活性を示すことが分かった。 調製したCNCを用い、L-アラニンエチルエステル塩酸塩をモノマーとするポリL-アラニンの合成について検討した。モノマーおよびCNCの濃度をそれぞれ0.7 Mおよび0.5% (w/v)とし、30℃下、24時間、1 MのHEPES緩衝液中(pH 7)で反応させた結果、アラニンオリゴマーに相当する生成物を高速液体クロマトグラフィー装置により検出し、CNCが重合触媒として機能する可能性が示唆された。しかしながら、収率はごくわずかであった。
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