平成27年度は、平成26年度に得られた知見を基にして、高配向ナノファイバー不織布を調製し、メカノクロミック特性の評価を行った。ポリマーサンプルは、基本的には初年度に合成したものをそのまま用いた。高配向ナノファイバー不織布の調製は、初年度に使用した装置で、コレクター部分を平板コレクターからドラムコレクターへ交換することにより行った。実際に、ドラムコレクターを用いることで、高い配向性を有するナノファイバー不織布を調製できた。得られるナノファイバー不織布に関して、配向方向に対して垂直および平行方向の応力を印加することで、異方性を評価した。今回用いたサンプルでは、メカノクロミック特性の感度が大幅に向上するにはいたらなかったが、ファイバー状のサンプルにおいてもメカノクロミック特性が発現することを明らかにした。 具体的には、ナノファイバー作製の確認は走査型電子顕微鏡観察により行い、特性評価に関しては、電子スピン共鳴スペクトル測定や引張試験などを用いて行った。主として結晶性のポリカプロラクトンを用いたが、結晶のラメラ方向がファイバーの軸方向と直行したため、効率的にメカノクロミック分子に力学的なエネルギーが伝わらなかった可能性も考えられる。一方で、セグメント化ポリウレタンを利用することで、ファイバー状のサンプルにおいてもメカノクロミック特性が発現することを見出した。着色はフィルム状のサンプルと比較すると決して顕著ではないものの、今後の研究展開に向けて重要な研究成果となった。
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