研究課題/領域番号 |
26620178
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
寺本 好邦 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40415716)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | キチン / セルロース / ナノファイバー / ナノクリスタル / 配向制御 / 熱可塑性 |
研究実績の概要 |
構造多糖ナノファイバーへの配向性付与は,異方性機能材料の開発に有用であり,その制御法が強く求められている。しかし一般にナノファイバーは水分散液で供給されるため,応力印加による配向性付与は困難である。そこで本研究では,構造多糖と親和性の高いポリマーを含有するポリマーマトリックス(PM)を用い,ChNF/PM複合体とすることで,PMに応力伝達を担わせ,ChNFを配向させることを試みた。PMの組成によりガラス転移点(Tg)を制御できることから,Tg以上で熱加工して配向性を付与した後,冷却すれば配向性を固定化できることを期待した。このような熱可塑性プラスチック様の成形法「擬溶融成形」を用いて,ChNFの配向制御を検討した。 PMは,ポリビニルピロリドン(PVP)とグリセリンの複合体とした。複合体を示差走査熱量(DSC)測定と動的粘弾性測定(DMA)に供した。擬溶融成形の際には,一軸押出成形機(L/D = 20)を用いた。別途,キャスト後に熱プレスして得たフィルムの延伸加工も行った。延伸試料の複屈折を偏光顕微鏡で評価した。 DSC測定により,PMの組成によりTgを制御できることがわかった。ChNFを添加するとTgが上昇したことから,ChNFはPM中に良好に分散していると判定した。DMA測定より,ChNF/PM複合体の室温における貯蔵弾性率(E')は,概ねChNFとPVP含有率の増大により上昇し,Tg近傍のβ緩和温度(Tβ)以上の高温におけるE'もChNF含有率とともに著しく上昇した。 これらのデータを考慮し,擬溶融成形を行える組成(室温 < Tβ)を選び,一軸押出成形機を用いてガット状のChNF/PM複合体を得ることができた。別途,熱延伸フィルムも調製できた。これらの試料の延伸倍率が及ぼすΔn値への影響を調査し,延伸試料中でChNFが配向していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,複合体の組成によって熱加工温度を制御することができ,汎用の高分子の成形機での加工と,フィルムの延伸による配向固定化を達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
ChNFとPMの引力的相互作用を低減して,ChNFの配向性をより高めるために,簡便な手法でのChNFの表面修飾を試みる。配向試料の(i)力学物性の異方性の調査,並びに(ii) それを基板とする細胞培養実験と細胞の成長・増殖のモルホロジーへの影響の確認,を行い,ナノファイバーの配向性が材料としての性能・機能発現に結びつくかについて,評価を続ける。
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