研究課題/領域番号 |
26620179
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
浦山 健治 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (20263147)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液晶 / エラストマー / ゴム / アクチュエータ / 液晶高分子 / 高分子液晶 |
研究実績の概要 |
液晶エラストマー(LCE)は全固体の中で最大の熱変形を示すといわれ,熱駆動のアクチュエータの素子として期待されている.しかし,液晶を巨視的に配向させた状態つまりモノドメイン配向状態で架橋反応を行う必要があり,この複雑な合成過程がLCEの応用面で大きな障害となっていた.研究代表者は,自身の研究により,等方相で架橋されたランダム配向のポリドメインLCEが非常に小さい荷重でモノドメイン配向に転移すること(ソフト弾性)を発見した.このソフト弾性の概念に基づき,研究代表者は荷重下ではポリドメインLCEはモノドメインLCEのように熱駆動するのではないかという着想を得た.ポリドメインLCEは,架橋時の面倒な配向操作は一切不要であるため,合成は極めて容易である.このポリドメインLCEのソフト弾性を利用した熱駆動の原理が実証されれば,LCEのアクチュエータとしての応用の可能性は大きく広がることが期待される. アクリレート骨格のポリドメイン配向の側鎖型液晶エラストマー(PLCE)を合成した.架橋を行う温度を変化させ,ネマチック相および等方相で架橋した試料を作製した.PLCEに一定の荷重をおもりをつり下げることにより印加し,温度を変化させて試料長を測定した.マクロな液晶配向をもたないPLCEは無荷重状態では温度の変化に対して全く変形を示さない.一方で,荷重下では液晶相の温度範囲では温度変化に対してモノドメインLCEのように配向方向に30%程度伸縮することを確認した.これは研究代表者の提案したポリドメインLCEの熱駆動の基本原理が実証されたことを示す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が提案する「ポリドメインLCEのソフト弾性を利用した熱駆動の原理」の妥当性は,荷重下の大きな熱伸縮が実験によって確認されたことにより,実証されたといってよい.現在,実験で確認された熱伸縮は30%程度である.同原理を利用したさらに大きな熱伸縮の達成に向けて,主鎖型LCE試料の合成の段階にこぎつけている.これは研究目的の達成度としてはおおむね順調に進展しているといってよい.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに研究代表者が提案した熱駆動の原理の基本は実証されたといってよい.今後はこの原理に沿って,さらに大きな熱駆動を実現すべく,研究を推進する.具体的には,1)液晶基を網目骨格にもつ主鎖型ポリドメインLCE,および2)架橋剤に液晶性をもった分子を利用した側鎖型LCE,を作製し,測定に供する.
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