2年目は、1年目から得られた界面における高分子間相互作用の観察結果を基にして、接着力の評価と接着剤など機能性への応用へ展開することが目的であった。 まず、バネはかり法によってポリ(L-乳酸)とポリ(D-乳酸)のスピンコート薄膜界面での接着力が、ポリ(L-乳酸)同士の界面および交互積層薄膜の界面と比べて、強い力を示したことを見出した(学会発表済み、論文化中)。 また計画通りに、基板界面に粒子を挟み込んで、その選択的な力を観察する実験を行った。当初はシリカゲル粒子を計画していたが、より小さなナノサイズの粒子を用いる必要が判明したため、金ナノ粒子を用いて実験を行ったところ、選択的接着剤として利用可能であることが分かった(特許出願済)。 末端にカテキンという抗菌性を有する嵩高い置換基を導入してアセトニトリル溶液中でポリ(L-乳酸)とポリ(D-乳酸)を相互作用させたところ、分子量が数千程度の場合十分に高分子間相互作用が働いてステレオコンプレックスを形成することを確認した(論文受理)。さらにクロロホルム溶液として、インクジェット装置により高速で吐出されたガラス基板上においても、溶媒の蒸発とポリマーの溶解を早く繰り返しながらも高分子間相互作用によりステレオコンプレックスを形成することを確認した(論文受理)。このようにインクジェット装置を用いた高分子間相互作用の発現は溶媒効果や温度効果にも大きく影響することを確認した(論文受理)。なお、関連する研究としてポリ乳酸を用いたオイルゲルから徐放実験を行い、接着材料のみならず、難水溶性薬物の担持材料としても利用可能であることを示した(論文受理)。
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