本年度は、以下の2つのテーマについて研究を行った。 (1)疎水性物質および水内包高分子ミセルの特性化 水溶液中での疎水性物質内包高分子ミセルや、有機溶媒中での水内包高分子ミセルは、ナノキャリアやナノリアクターへの応用が期待されている。その応用の際には、高分子ミセルのサイズや構造を明確に特性化されいることが重要である。本年度は、有機溶媒中に溶解しているポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)とポリスチレンのブロック共重合体が水を添加することにより形成する逆ミセルの特性化法を開発した。また、両親媒性交互共重合体が水溶液中で形成する花型ミセルに疎水性物質を内包させた際のミセル構造を光散乱法と小角X線散乱法を組み合わせて調べる方法の開発を行った。 (2)PNIPAM水溶液の相図の決定 ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)のヒドロゲルは体温付近で体積相転移を起こすため、さまざまなスマートマテリアルへの応用が期待されている。その基礎的理解のために、PNIPAM水溶液の相図を決定するのは重要な課題であるが、同系は巨視的な相分離が起こらず、これまでに正確な相図が決められていない。本研究では、コロイド状態のPNIPAM相分離水溶液に対して光散乱測定を行い、相図(バイノーダル)を決定する方法を開発した。
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