研究課題/領域番号 |
26620187
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大谷 文章 北海道大学, 触媒化学研究センター, 教授 (80176924)
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研究分担者 |
高瀬 舞 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20631972)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光触媒粒子 / 電子トラップ密度 / エネルギー分布 / 逆二重励起光音響分光法 / 伝導帯下端 |
研究実績の概要 |
電子トラップ密度の解析 前述したように結晶欠陥密度は光触媒活性に強い影響をあたえると考えられており,密度が高いほど電子―正孔の再結合が促進されて活性が低下すると信じられている.いっぽう,酸化チタンをメタノールなどの電子供与体存在下,無酸素の雰囲気で光を照射すると,青~青灰色に着色する.これは結晶欠陥に電子が捕捉されたためと考えられている.多くの金属酸化物がn型の半導体特性をしめすことから考えて,空のドナー準位がこの電子トラップとなっている可能性が高い.実際に,いったんトラップされた(蓄積した)電子によるメチルビオロゲンの還元反応を反応懸濁液のpHを調整して行うと,電子トラップのエネルギー分布を測定することができる(光化学法).アナタース,ルチルのいずれの場合でも伝導帯下端から0.1~0.2 Vの範囲に分布していることがわかる.この光化学法より簡便でかつ高精度の電子トラップ密度のエネルギー分布計測法として逆二重励起光音響分光法(RDB-PAS)を開発した(RDB-PAS).電子トラップの総密度が比表面積とともに上昇することから大半の電子トラップは微粒子表面に存在すると考えられ,露出結晶面によって電子トラップ密度のエネルギー分布が異なる可能性が高い.DAPあるいはOAPを含む酸化チタンについてRDB-PAS測定を行い,その電子トラップ密度とその構造依存性を解析した結果,RDB-PASにより光触媒粒子中の電子トラップ密度のエネルギー分布を解析するための装置と条件をほぼ確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
逆二重励起光音響分光法(RDB-PAS)による光触媒粒子中の電子トラップ密度のエネルギー分布測定について,装置と条件をほぼ確立した.研究計画にあげたもうひとつの測定法である電位走査型電極表面拡散反射分光法(PS-DRS)が,RDB-PASとちがって電極に整形しなければならない問題を含んでいるが,RDB-PAS測定を補完するデータが得られる可能性が高いので2015年度にはこのPS-DRSについて検討する.
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今後の研究の推進方策 |
電位走査型電極表面拡散反射分光法(PS-DRS)の開発と測定: 電子トラップに捕捉された電子の密度をその光吸収により測定することは上記のRDB-PASとおなじであるが,粉末状ではなく導電性電極上の薄膜に成型する点と,光励起ではなく,電位を制御した電極からの電子注入を行う点が異なる.電極電位をアノード側から走査すると,深いトラップから順に電子が捕捉(充填)されると仮定すると,電極表面の拡散反射スペクトルにおけるトラップに捕捉された電子による可視光吸収を追跡すれば,電子トラップ密度のエネルギー分解測定が可能である.
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次年度使用額が生じた理由 |
逆二重励起光音響分光法(RDB-PAS)による光触媒粒子中の電子トラップ密度のエネルギー分布測定について本年度に集中して検討し,装置と条件をほぼ確立した.研究計画にあげたもうひとつの測定法である電位走査型電極表面拡散反射分光法(PS-DRS)が,RDB-PASとちがって電極に整形しなければならない問題を含んでいるが,RDB-PAS測定を補完するデータが得られる可能性が高いので,このPS-DRSについて次年度に検討する.このための予算を次年度に繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
電位走査型電極表面拡散反射分光法(PS-DRS)測定のための少額備品と消耗品および研究成果発表のための旅費に使用する.
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