研究実績の概要 |
Polymorph Aからのみなるキラルな*BEA型ゼオライトの合成を目的としている。光学活性有機分子の存在下、OSDA free条件での*BEA型ゼオライトの結晶化を行うことで、不斉有機分子とシリカ種との直接の相互作用を実現しながらのゼオライトの結晶化ができれば目的を達成できると考えた。 不斉アンモニウム塩を用いたフッ化物法によるピュアシリカ*BEAゼオライトの合成において、平成26年度に引き続き、平成27年度においては、まず、通常の強アルカリ条件での結晶化ではなく、中性付近でゼオライトを結晶化させるフッ化物法によるAlを含まないピュアシリカでの*BEAゼオライトの合成検討を実施した。ここでは光学活性第四級アンモニウム塩を用い結晶化を試みた。アンモニウム塩の種類や合成条件など種々合成条件を検討したが、非晶質シリカが得られたのみであった。 次に、常法によりピュアシリカの*BEA型ゼオライト(Si-Beta)をあらかじめ合成しておき、不斉アンモニウム塩水溶液中でポスト水熱処理することにより、混晶から単晶への構造変換を試みた。不斉アンモニウム塩として、(S)-trimethyl-(1-phenyl-ethyl)-ammonium cation,を用いた。この第4級アンモニウム水溶液中にSi-Betaを加えて、120℃で水熱処理を行うことで、ポリモルフ間の相互変換が起こらないか検討した。対照実験として、アンモニウムの入っていない純水中で同様の処理を行った。XRDより、本来期待していた不斉炭素を含むアンモニウム水溶液中での構造変化は起こらなかった。興味深いことに、対照実験として純水中で行ったポスト処理により、7度付近の回折ピークが二つに割れる様子が観測された。全体のピーク強度が低下しているため、結晶性の低下が示唆されるが、ポリモルフAとBの割合が変化した可能性が考えられる。なお、焼成後もこの構造は保たれていた。純水中での単純なポスト水熱処理法によって構造変換が起こる可能性を示す結果が得られた。
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