研究課題
金属ナノ粒子は、粒子サイズや形状に依存して物理化学特性が大きく変化し、さらに極めて大きな比表面積を持つ。これらのことから、高活性触媒として利用する研究が活発に行われているが、ナノ粒子どうしが非常に凝集しやすく、その活性がすぐに低下するために実用化が困難となっている。一方、私たちは、蒸気圧が極めて低いイオン液体が高真空下でも液体状態を保つことに着目し、減圧下でイオン液体に対して金属スパッタリングを行うことによる貴金属ナノ粒子合成法を開発した(イオン液体-金属スパッタリング法)。本研究では、この手法を改良して貴金属コア・酸化物半導体シェル粒子を作製する方法を新たに開発し、得られた複合粒子の電極触媒活性を評価した。Au-Pd交互配列ターゲットを用いて、イオン液体(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート)にAuとPdを同時にスパッタ蒸着し、液体中にAuPd合金ナノ粒子(粒径:約2 nm)を作製した。このAuPd粒子分散イオン液体に、Inをスパッタ蒸着することにより、複合ナノ粒子を作製した。TEM観察から、複合粒子はAuPd粒子コア表面を約1 nmのIn2O3シェルが均一に被覆したコア-シェル構造ナノ粒子(AuPd@In2O3)であることがわかった。この粒子をHOPG基板に担持し、塩基性水溶液中でのエタノール酸化反応に対する電極触媒活性を評価したところ、酸化電流ピークが約0.8 V vs. RHEに現れた。その電流値は未修飾表面をもつAuPdナノ粒子とほぼ同じ値であったことから、触媒となるAuPdコアがIn2O3で均一に覆われていても、AuPd@In2O3は高い電極触媒活性を示すことがわかった。このことは、In2O3シェルにエタノール分子が透過できるサイズの細孔が存在することを示す。
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