研究課題/領域番号 |
26620192
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 晃司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50314240)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / ナノレーザー / プラズモニクス |
研究実績の概要 |
半導体電子回路の集積密度は飽和を迎えつつあり,これを克服する一つのアプローチとして速く信号を伝えられる光回路を組み込むことが提案されているが,光の回折限界により光回路を微細化された電子回路に組み込むことは困難である。本研究では,高速性と微細性を兼ね備えた次世代情報伝達・処理回路の要素技術として,金属/誘電体のナノ積層構造の誘電体層に量子ドット等の利得媒質を導入し,表面プラズモンの誘導放出に相当するスペーザー発振(ナノレーザー)の実現を目的としている。 これまでの研究において,利得をもつ半径が100ナノメートルのシリカ粒子に10ナノメートル厚の銀キャップを被せた構造に対して光を入射し,入射方向をさまざまに変えたときのスペーザー発振を数値計算の手法で調べた結果,電気四極子のプラズモン共鳴モードにより指向性をもつ高強度スぺーザー発振の可能性が示唆されている。平成26年度は,これを実証するため,利得媒質を含む球状のシリカナノ粒子に金属キャップを被せたコア-シェル構造の作製を目指した。まず,独自の液相プロセスを用いて,利得媒質を含む球状のシリカナノ粒子のサイズ制御技術を確立し,次に,気相プロセスを用いて,Agキャップ被覆によるコア-シェルナノ粒子を合成するための条件を見出した。しかしながら,光学測定によりAgキャップ被覆の精度が低いことがわかり,現在,被覆技術の改良に取り組んでいる。今後は,Agキャップ被覆によるコア-シェルナノ粒子の合成課題を早急に解決し,ナノレーザーの実証に向けた光学実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
表面プラズモンの誘導放出に相当するスペーザー発振の実現には,金属と誘電体ナノ構造の複合化が必要とされる。所望の誘電体ナノ粒子の合成ならびにサイズ制御は可能となったが,金属キャップ被覆は当初予想より技術的な困難を伴い,合成条件の探索に時間を要した。しかしながら,気相プロセスを用いることにより金属ナノキャップ被覆の実現に目途がつき,やや計画から遅れているものの,研究目的達成に向けて進展している。
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今後の研究の推進方策 |
利得媒質を含む球状の誘電体ナノ粒子に金属キャップを被せたコア-シェル構造の作製を完成させるため,金属ナノ構造の合成条件を最適化に注力する。最終目標は,表面プラズモンの誘導放出に基づく高強度かつ指向性をもつスペーザー発振の実証であるため,合成実験と並行して,光学実験の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進行が若干遅れており,試料合成のための試薬購入を次年度に遅らせたため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由で本年度に購入できなかった試薬を次年度使用額分で購入する。 翌年度分として請求した助成金は,当初の計画通り使用するため、2年間全体の計画に変更はない。
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