研究課題/領域番号 |
26620194
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 弘巳 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40200688)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラズモン / プラズモニック触媒 / マイクロ波 / メソ空間 / 金属触媒 / ナノ粒子 / 光触媒 / 多孔体 |
研究実績の概要 |
本研究では、急速・均一加熱が可能なマイクロ波加熱とメソ多孔体の規制空間を利用して、形状・サイズ・色彩が精密制御された金属ナノ粒子をメソ細孔内に調製することを試みた。形状・サイズ・色彩を制御した金属ナノ粒子(Ag, Au, Cu-Ag, Pd-Au)の“局在表面プラズモン共鳴(LSPR)”を利用して、金属触媒性能を飛躍的に向上させた「プラズモニック金属触媒」の創成を目指した。平成26年度では、組成・形状・サイズ制御による様々な色彩を有する金属・合金ナノ粒子触媒の調製を目指して、以下の研究を実施した。 マイクロ波を用いた誘導加熱では、急速・均一加熱によって、均一粒径を有する金属ナノ粒子の合成が可能である。メソポーラスシリカの規定細孔空間を反応場にすることで、形・サイズが精密制御された金属ナノ粒子の調製が期待できる。本研究ではメソポーラスシリカを含むアルコール溶媒中でマイクロ波加熱を施すことにより、メソ細孔空間内で形・サイズを精密制御した金属ナノ粒子(Ag, Au、Pd)の調製を行った。マイクロ波の照射時間や雰囲気、アルコールの種類などを調節することでサイズ制御を試みた。 メソ空間に沿った粒子成長が起こるため、メソ細孔の構造・サイズを変えることで、金属微粒子の形状(形態やアスペクト比)の制御を可能にした。形状とサイズの制御によりLSPR効果が変化することで、様々な色彩を有する金属ナノ粒子の調製ができた。金属ナノ粒子の凝集抑制効果を示すポリビニルピロリドン(PVP)などの表面配位子の利用も有効であり、より精密なサイズ制御を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の研究目的は、急速・均一加熱が可能なマイクロ波加熱とメソ多孔体の規制空間を利用して、形状・サイズ・色彩が精密制御された金属ナノ粒子をメソ細孔内に調製し、金属触媒性能を飛躍的に向上させた「プラズモニック金属触媒」の創成を行うことである。平成26年度では、以下の研究成果を得て、20件以上の学術論文発表を行い、当初の目標を達成した。その成果が評価され、研究代表者は、触媒学会賞を受賞した。 マイクロ波を用いた誘導加熱では、急速・均一加熱によって、均一粒径を有する金属ナノ粒子の合成が可能であることを明確にできた。メソポーラスシリカを含むアルコール溶媒中でマイクロ波加熱を施すことにより、メソ細孔空間内で形・サイズを精密制御した金属ナノ粒子(Ag, Au、Pd)を調製することができた。メソ細孔の構造・サイズを変えることで、金属微粒子の形状(形態やアスペクト比)の制御を可能にした。形状とサイズの制御によりLSPR効果が変化することで、様々な色彩を有する金属ナノ粒子の調製ができた。金属ナノ粒子の凝集抑制効果を示すポリビニルピロリドン(PVP)などの表面配位子の利用も有効であり、より精密なサイズ制御を行うことができた。 以上より、マイクロ波加熱とメソ多孔体の規制空間を利用して、形状・サイズ・色彩が精密制御された金属ナノ粒子の調製し、プラズモニック触媒を開発する指針を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
形状・サイズ・色彩を制御した金属ナノ粒子(Ag, Au, Cu-Ag, Pd-Au)の“局在表面プラズモン共鳴(LSPR)”を利用して、金属触媒性能を飛躍的に向上させた「プラズモニック金属触媒」の創成を目指し、以下の新しい環境調和型機能材料の開発を行う。 1) 各種光環境下におけるLSPR誘起効果の触媒反応系への応用: 開発した金属ナノ粒子触媒について、最近注目されているアンモニアボラン(NH3BH3)やギ酸などの水素貯蔵材料からの水素製造や、VOCの分解、アルコールの選択酸化などの金属触媒反応を、太陽光や蛍光灯、LEDなどの温和な光環境下(可視光、赤外線)で行い、金属触媒作用に対するLSPR効果の影響について調査する。既存の金属触媒の性能を凌駕する「プラズモニック金属触媒」の開発を試みる。 2) 触媒反応へのLSPR誘起促進効果のメカニズム解明: LSPRにより発生する金属表面の電荷分離状態は、金属の組成・形状・サイズによって大きく異なるため、各種分光装置を利用したin-situ測定を重点的に行う。in situ XAFS、IRやサイクリックボルタンメトリー(CV)測定により、金属ナノ粒子の局所構造や表面電荷状態、吸着・反応した基質の状態を追跡し、LSPR効果による触媒作用促進のメカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
得られた成果の発表や情報収集をするべき有意義な国際会議や国内会議が次年度に多数存在するため、旅費への使用目的で次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
1日本-台湾触媒会議(Japan-Taiwan Catalysis Conference, 4月、高雄(台湾))、環太平洋国際化学会議(The International Chemical Congress of Pacific Basin Societies、12月、ホノルル(米国))に参加発表するための旅費に使用する。
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