本研究では,カーボンナノ空間の規制された反応場を利用して,コンバージョン反応により生成するLi化合物相と金属相の空間的分離をナノレベルで抑制して大きな反応ナノ界面を形成させるという新しいアプローチにより,既往研究では困難であったコンバージョン反応の可逆性の飛躍的な向上に挑戦するものである。本目的に向けて,カーボン系ナノ多孔体細孔空間に活物質を析出させたナノ複合構造体を創製し,充放電特性の評価やナノ構造制御の効果の解明を行った。 前年度に,メゾ・マクロ細孔が規則的に配列した多孔カーボンのナノ細孔内のみに優先的にSnO2ナノ結晶を析出させる方法を開発し,SnO2-Snのコンバージョン反応や引き続いて起こるSn-Liの合金・脱合金化反応の可逆性が大幅に向上することを明らかにしている。今年度は,カーボンナノ多孔体の細孔径やSnO2の充填率,SnO2ナノ結晶のサイズを系統的に変化させたナノ複合体の合成に成功し,各構造パラメータとコンバージョン反応や合金・脱合金反応に伴う充放電容量やサイクル特性との相関性を調べた。その結果,コンバージョン反応や合金・脱合金化反応に伴う体積変化に必要な空間を確保することが高容量発現やサイクル安定性に必要であることがわかった。材料構造の最適化により,コンバージョン反応では70%以上,合金・脱合金化反応では100%の反応可逆性を達成した。 さらに,交流インピーダンス測定により,ナノ複合材料内の各反応抵抗を調べ,上記の構造制御により反応抵抗が大幅に低下していることも明らかにした。 一方,コンバージョン反応による充放電が期待されるFeF3についても,多孔カーボンとのナノ複合体を合成することに成功し,充放電特性が向上することを突き止めた。
|