研究課題/領域番号 |
26620201
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松井 淳 山形大学, 理学部, 准教授 (50361184)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヘテロ接合 / 電荷蓄積 |
研究実績の概要 |
本研究はエレクトロクロミック材料やレドックスポリマーをそれぞれの酸化還元電位に基づいてマルチヘテロ接合することで1電極でフルカラー着色可能な材料を構築するものである。マルチヘテロ接合体の作製法としては静電相互作用を利用した交互積層法を用いるため、本年度はルテニウム錯体を有するカチオン性のレドックスポリマーとアニオン性のプルシアンブルーナノ粒子の合成と交互積層膜の作製を行った。ルテニウム錯体を有するカチオン性レドックスポリマーは初めにメタクロイルコリンクロライドとビピリジンのビニル誘導体とをラジカル共重合した後に、cis-ビス(2,2’-ビピリジン)ジクロロルテニウム(Ⅱ)水和物との高分子反応により合成した。またプルシアンブルーナノ粒子はフェロシアン化カリウムと硝酸鉄(Ⅲ)を反応させることで合成した。これらとポリアクリル酸、ポリエチレンイミンを用いてITO上に内側にルテニウム層が外側にプルシアンブルーナノ粒子層が形成されるように交互積層膜を作製した。この交互積層膜のサイクリックボルタンメトリー測定を行ったところ、プルシアンブルーナノ粒子は電極とは電気化学反応が起こらないことがわかった。これは内側のルテニウム層により電極とプルシアンブルー層が離されたためである。そのため、プルシアンブルーの酸化は内側のルテニウム層が酸化されて初めて起こることがわかった。これより1度外側のプルシアンブルーが酸化されるとその状態は電極電位にかかわらず安定に保持されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチヘテロ接合の基盤となるダブルヘテロ接合の構築に成功し、その特徴である電荷蓄積を達成している。これは初年度の研究計画の通りでありおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ダブルヘテロ接合における電荷蓄積が明らかとなったため今後は電家蓄積を光学的に明らかにするとともにマルチヘテロ接合体を構築し、多色エレクトロクロミズムを視認できるレベルで実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はレドックスポリマーとエレクトロクロミズム材料をそれぞれの酸化還元に基づいて交互積層することでフルカラーエレクトロクロミズム材料を構築するものである。初年度はカチオン性を示すルテニウム錯体含有レドックスポリマーおよびプルシアンブルーナノ粒子錯体の合成に取り組んだ。ルテニウム錯体レドックスポリマーに関しては合成は研究計画通りに進行したが、その交互積層膜を作製し電気化学挙動を検討したところ、酸化電流に対して、還元電流が小さくまた酸化還元を繰り返すにつれて電流値が減少するという挙動が観測された。原料はNMRレベルで精製されていることは確認済であった。原因を追及する過程で電解質を含む有機溶媒で交互積層膜を洗浄することで安定な電流値を得られることを見いだした。安定な電流値を得る手法を見いだすまでに時間がかかり他の材料合成を行うことが出来ずに計画より使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度で合成予定であったコバルト錯体を含有したカチオン性高分子の合成に使用する。当初予定ではターピリジル錯体から2段階で合成する予定であったが、上記のようにルテニウム錯体含有レドックスポリマーの合成に手間取ったため、高価であるが、一段階でビニル基を導入可能なタービリジル錯体の購入に使用する。
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