研究課題/領域番号 |
26620202
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
笹部 久宏 山形大学, 理工学研究科, 助教 (10570731)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低電圧 / 燐光発光材料 / 分子配向 / 弱い分子間水素結合 |
研究実績の概要 |
本研究は「乾電池1本で発光する有機ELデバイスの実現」を目的としている。直接励起機構と熱活性化発光を利用した超低電圧駆動有機ELデバイスを開発する。高性能有機ELデバイスの温度依存特性と材料の電子物性値を多角的に検討し、駆動メカニズムを解明すると共に、熱活性化機構に適した材料、デバイス構造を見出す。 初年度である本年は、温度依存性評価のために、ペルチェ素子を用いた温度可変デバイス特性システムを立ち上げた。また、トリフェニルトリアジン骨格を有する新規なBPyPTZ誘導体を設計・合成、多入射角分光エリプソメトリーによる分子配向、デバイス特性を評価した。多入射角分光エリプソメトリー測定から,B3PyPTZは屈折率・消衰係数のいずれもが基板水平方向に大きく,異方性が発現することがわかった。配向パラメータS値は -0.38 であり,TPBi (S =-0.02)と比較し,基板に対して大きく水平配向する結果であった。一般的な緑色リン光有機ELデバイスを作製・評価した。輝度1 cd m-2時に駆動電圧2.11 Vの極めて低い発光開始電圧を示し,実用的な輝度1000 cd m-2時には,駆動電圧2.88 V,電力効率73.9 lm W-1,外部量子効率18.8%を示した。この特性は,TPBiを用いた素子と比べると0.94 Vの低電圧化,1.6倍の効率であり,BPyPTZ誘導体の電子輸送材料としての有用性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は、(1)直接励起発光技術の確立、(2)温度依存性評価、(3)周辺材料探索によるデバイス設計指針の獲得の3点であった。初年度には、(2)の検討項目のために、ペルチェ素子を用いた温度可変デバイス特性システムを立ち上げた。今後、温度依存性の評価を行う予定である。また、(3)トリフェニルトリアジン骨格を持つ材料BPyPTZを開発し、量子化学計算⇔材料合成⇔固体薄膜物性評価⇔デバイス特性評価の4つの相関関係を明らかとするだけでなく、輝度1 cd/m2時に駆動電圧2.11 Vの極めて低い発光開始電圧を示し,実用的な輝度1000 cd/m2 時には,駆動電圧2.88 V,電力効率73.9 lm/W, 外部量子効率18.8%を示すデバイスの開発にも成功した。多入射角分光エリプソメトリー測定から,B3PyPTZは屈折率・消衰係数のいずれもが基板水平方向に大きく,異方性が発現することがわかった。配向パラメータS値は -0.38 であり,TPBi (S = -0.02)と比較し,基板に対して大きく水平配向する結果であった。研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、立ち上げた温度依存評価システムを用いて、有機ELデバイスの特性変化を検討する予定である。また、計画に従い、低電圧化に資する新規材料の開発を行うとともに、「乾電池1本で発光する有機ELデバイスの実現」を目指す。新たな材料ができ次第、可能な項目を随時検証して柔軟に研究を進めていき、得られた成果を取りまとめ、成果の発表を適時行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ターゲットの有機半導体材料の合成ルートの徹底した見直しにより、経費を大幅に削減できたため。また、一部使用材料を市販品の購入ではなく、廉価な材料からの合成に切り替えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究費は、新規材料開発に必要な薬品類等の購入、研究成果発表のための旅費、論文発表にかかる経費、研究遂行に必要な書籍類などに用いる予定である。特に多くの予算を有機合成用試薬、ガラス器具、有機ELデバイス作製用の消耗品費に計上する。本研究では真空蒸着型素子をターゲットにしているが、デバイス作製に必要な電極金属、フィラメント、ルツボ等も必要不可欠である。また、国内外で成果発表を行うために、旅費、滞在費、参加費に使用する。必ず海外発表を行ない、研究成果の世界への発信と発表スキルを身につける。論文発表を多数行う予定であり、作成時に必要なソフト、英文校閲費、別刷代を計上する。また、研究を迅速かつ効率的に遂行するための資料・書籍費の予算を多く計上し、研究室の研究用参考書籍及び資料の充実を図りたいと考えている。
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