本研究は「乾電池1本で発光する有機ELデバイスの実現」を目的としている。直接励起機構と熱活性化発光を利用した超低電圧駆動有機ELデバイスを開発する。 初年度では、トリフェニルトリアジン骨格を有する新規なBPyPTZ誘導体を設計・合成、多入射角分光エリプソメトリーによる分子配向、デバイス特性を評価した。一般的な緑色リン光有機ELデバイスを作製・評価したところ、輝度1 cd/m-2時に駆動電圧2.11 Vの極めて低い発光開始電圧を示し,実用的な輝度1000 cd/m2時には,駆動電圧2.88 V,電力効率73.9 lm/W,外部量子効率18.8%を示した。この特性は,TPBiを用いた素子と比べると0.94 Vの低電圧化,1.6倍の効率であり,BPyPTZ誘導体の電子輸送材料としての有用性が示された。 最終年度では、まず、混合ホストを利用した青色リン光素子の低電圧化に取り組んだ。デバイスを作製・評価したところ、輝度1 cd/m-2時に駆動電圧2.49 Vの極めて低い発光開始電圧を示し,実用的な輝度1000 cd/m2時には,駆動電圧3.25 V,電力効率86 lm/W,外部量子効率32.5%を示した。 一方、第三世代の熱活性化遅延蛍光発光素子の低電圧化にも取り組んだ。申請者らの材料系を利用することにより、最大で既存系の 1.6倍の 100 lm/W を超えるデバイスの開発に成功した。輝度1 cd/m-2時に駆動電圧2.33 Vの極めて低い発光開始電圧を示し,実用的な輝度1000 cd/m2時には,駆動電圧3.17 V,電力効率79 lm/W,外部量子効率24.8%を示した。申請者らの開発した一連の電子輸送材料群および混合ホスト系を利用することにより、第二世代、第三世代の有機ELデバイスの超低電圧化に成功した。これにより、世界最高水準の電力効率を示すデバイスの開発に成功した。
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