研究実績の概要 |
平成26年度は、「電子ドナー性のオリゴチオフェンOT」と「電子アクセプター性のナフタレンジイミドNDI」が共有結合で連結したD/A連結ユニットを側鎖に規則配列したらせん状ポリペプチドを合成し、その光学的特性について検討を行った。 アミノエチル基含有ビチオフェン(1a)またはターチオフェンユニット(1b)を合成し、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物及びL-リジン誘導体とのイミド化反応、続く環化反応を行うことにより側鎖にD/A連結ユニットを導入したN-カルボキシ-α-アミノ酸無水物(2a及び2b)の合成を行った。得られたモノマーの開環重合を行うことにより、ポリペプチド誘導体(poly-2a及びpoly-2b)を得た。 得られたポリマーの円二色性(CD)及び吸収スペクトルをTHF溶液中で測定した結果、いずれのポリマーにおいても明確なコットン効果が観測されることが分かった。ポリマー主鎖の吸収領域には、ポリペプチドが高次構造を形成していることを示唆する特徴的なCD吸収が観測され、側鎖に導入したD/A連結ユニットの吸収領域にも明確なコットン効果が観測されることが分かった。 ビチオフェンユニットを有するpoly-2aと比べてターチオフェンユニットを導入したpoly-2bの方がD/A連結ユニットに由来するCD強度が増大しており、これは構成チオフェン環数が増えたことにより、側鎖間のπ-πスタッキングが効率的に作用したためだと推察される。Poly-2bのIRスペクトルを測定したところ、1630 cm-1付近に、ポリペプチド骨格がβシート構造を形成していることを示唆するピークが観測され、CDスペクトルの結果とも一致した。以上の結果から、本ポリマーはポリペプチドに特有の高次構造を形成しており、主鎖に沿って側鎖のD/A連結ユニットが不斉な環境で配列していることが明らかとなった。
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