平成27年度は、“主鎖を構成する全ての原子上に望みの機能性側鎖を高密に導入可能なポリイソシアノペプチド”に着目し、“導入するアルキル基の種類や構成チオフェン環数が異なるオリゴチオフェンユニット”を側鎖に導入したポリイソシアノペプチド誘導体を系統的に合成し、側鎖構造が高次構造形成に与える影響について詳細に検討を行った。また、当該イソシアニドモノマーの鏡像体過剰率が、重合挙動や生成ポリマーの高次構造形成能に及ぼす影響についても検討を行った。 その結果、側鎖オリゴチオフェンユニットを精緻に構造設計することで、ポリマー主鎖がらせんコンホメーションを取り得ることを見いだし、そのらせん構造に沿ってオリゴチオフェンユニットを高密度規則配列させることに成功した。具体的には、五つのチオフェン環が連結したキンクチオフェンユニットに直鎖アルキル基を導入したポリマー(poly-1)が、主鎖の吸収領域にらせん構造形成に由来する特徴的な円二色性(CD)吸収を発現するとともに、オリゴチオフェンユニットの吸収領域に励起子カップリングに由来する分裂型のコットン効果(長波長側から負-正の符号)を示すことを明らかにした。当該イソシアニドモノマーは対応する吸収領域に明確なCD吸収を示さないことも確認している。これらの結果は、主鎖らせん構造に沿ってオリゴチオフェンユニットが反時計回りにずれながらスタッキングしていることを示唆している。 また、poly-1を合成する際、当該モノマーの鏡像体過剰率が、重合挙動や生成ポリマーのらせん構造形成能に非常に敏感に影響を及ぼすことも見出している。これは、「生長末端近傍と挿入されるモノマー間」あるいは「側鎖ユニット間」に作用する水素結合やπ-πスタッキング相互作用さらには立体障害等の絶妙なバランスにより、「著しい重合速度の加速」及び「らせん構造の安定化」が生じたものと推察している。
|