研究実績の概要 |
ペンタセンの全重水素置換体(ペンタセン-d14)は,共同研究により,合成してもらった.構造(A)ITO/ペンタセンまたはペンタセン-d14(45 nm)/C60(50 nm)/BCP(10 nm)/Alと構造(B) ITO/PEDOT-PSS/ペンタセンまたはペンタセン-d14(45 nm)/C60(50 nm)/BCP(10 nm)/Alの有機薄膜太陽電池を製作した.ITOをパターニングした基板を購入して,その基板表面を洗浄後,ペンタセンまたはペンタセン-d14,C60,BCPの薄膜,Al電極を蒸着した.デバイスは,簡易グローブボックス中で封止した.このデバイスに疑似太陽光AM1.5G(100 mW/cm2)を照射して電流密度・電圧特性を測定した.測定データから,Voc, Jsc, FFを求めて,光電変換効率Eを計算した.デバイス構造(A)で,ペンタセンの場合,Voc=0.36 V, Jsc=5.2 mA, FF=0.47, E=0.89 %,ペンタセン-d14の場合,Voc=0.38 V, Jsc=4.3 mA, FF=0.47, E=0.76 %であった.デバイス構造(B)では,ペンタセンの場合,Voc=0.30 V, Jsc=8.0 mA, FF=0.27, E=0.65 %,ペンタセン-d14の場合,Voc=0.34 V, Jsc=6.1 mA, FF=0.51, E=1.1 %であった.このデバイスに関して,ペンタセン-d14を用いると,ペンタセンの場合よりもVocが大きくなる予測であったが,実測値は,デバイス構造(A)で0.02 V,構造(B)で0.04 Vとそれほど大きくならなかった.密度汎関数法理論により,ペンタセンとペンタセン-d14の零点エネルギーの差を求めところ,1.24 eVであり,このデータはVocが1.24 V大きくなることを示している.
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