研究課題/領域番号 |
26630002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
燈明 泰成 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50374955)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金属細線 / 熱的境界条件 / 熱処理 / 省エネルギー / マイクロコイル |
研究実績の概要 |
1.金属細線周りの熱的境界条件のモデル化 断熱環境下に置かれた金属細線に一定直流電流を入力する伝熱問題を取り扱い、電流入出力点と接続された物質の熱容量が当該細線系の温度上昇に大いに影響することを明らかにした。具体的に、金属細線が十分な熱容量を有する物質と接続された場合は細線内部の温度勾配が非常に小さくなることに着目し、当該細線が定常温度に達するまでの時間から算出した細線への総入力熱量から細線温度を解析的に求めることに成功した。また、細線と接続された物質の熱容量が小さく、電流付与下で物質の温度が変化する場合、当該物質も含めた伝熱問題を考えることで、同様に細線温度を求めることが可能である。この成果は金属細線の局所的な軟化熱処理に大いに有益な成果である。 2.金属細線切断実験との照合 直径25umのCuマイクロ細線を対象とし、Ag,W,SUS304製の異なる通電プローブを用いて当該細線を切断するのに要する電流値を調査した。同種材料の通電プローブを組み合わせて通電したところ、細線は中央で切断されたが、異種材料の通電プローブでは細線中央部以外で切断された。これより電流入出力点と接続された物質の熱容量が細線内部の温度分布に大いに影響を及ぼすことを明らかにした。また同種材料の通電プローブを用いた場合、細線を切断するのに必要な電流はAg,W,SUS304の順に大きく、この順番は材料の熱伝導率が小さくなる順に一致していた。真空環境下においてもCuマイクロ細線の切断実験を行い、断熱環境下では大気中よりも低い電流値で細線が切断することを確認した。 3.金属細線内部温度の制御 構築した理論伝熱モデルよりCuマイクロ細線を573Kにするのに必要な電流値を算出し、実際に真空環境下で通電したところ、当該細線の結晶粒が通電区間内で一様に成長したことが観察でき、構築した理論伝熱モデルの妥当性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載のとおり、申請時に計画した研究を遂行し、金属細線周りの熱的境界条件を変化させて通電した際の細線温度を解析的に求めることに成功すると共に、実際に真空環境下でマイクロ細線に通電して当該細線の結晶粒成長を確認するなど、進展は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
構築した理論伝熱モデルと実験系を駆使して金属細線の局所的な軟化熱処理を実現すると共に、当該細線の組織観察を通して細線内部にどの様な温度分布が形成されたかを調査する。さらに実現した軟化熱処理により延性を回復させた金属マイクロ細線を塑性加工して真円度の高い金属マイクロコイルを実現し、当該マイクロコイルの電磁気的素子としてのポテンシャルを探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(44,550円)は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度請求額と合わせて、平成27年度の研究を遂行するために使用する予定である。
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