1.金属細線の局所的な熱処理 真空環境下において、十分な熱容量を有する通電プローブを用いて直径25umのCuマイクロ細線に通電することで、当該マイクロ細線の均一な昇温を実現し、これにより通電区間内においてマイクロ細線の結晶粒を均一に成長させることに成功した。前年度に構築した理論伝熱モデルより必要な電流値を算出し、様々な温度と通電時間でマイクロ細線の熱処理を行った。 2.組織観察による熱処理区間の検証 上記(1)で様々な条件下で熱処理したCuマイクロ細線の表面を走査イオン顕微鏡で観察し、熱処理の前後でマイクロ細線の結晶粒がどのように成長したかを調査したところ、373Kなる比較的低い温度で当該マイクロ細線の結晶粒成長が飽和することがわかった。また通電時間を変化させて結晶粒を成長させたところ、わずか数分程度でマイクロ細線の結晶粒成長が飽和し、本手法により極めて短時間、かつ加熱炉等を用いる従来手法と比較して省エネルギーで金属細線の熱処理が行えることを明らかにした。 3.微小区間曲げ試験による軟化の確認 顕微鏡観察下において、異なる温度で熱処理したCuマイクロ細線の微小区間曲げ試験を実施して当該マイクロ細線の荷重-変位曲線を取得したところ、熱処理により降伏荷重は半分以下に、また降伏後の変位に対する荷重の増分も大いに低下し、熱処理によりマイクロ細線が確かに軟化したことを確認した。特にわずか323Kの熱処理でも当該マイクロ細線が十分に軟化することが確認された点は特筆すべきである。
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