カーボンナノチューブ(CNT)分散系の往復せん断流れで誘起形成されるヘリカルバンド(HB)と呼ばれる秩序化した紐状組織の内部構造を制御する方法を開発し,その紐状構造を含む機能性材料を試作した.そして,その性能と有効性を明らかにする事を目的とした実験的研究を行った. まず,分散媒の粘度を変化させて,HBの形成性を確認した.そして,分散媒の粘度によって,HB構造の形成の早さ,また,HB構造の安定性が異なることを明らかにした.低粘度の分散媒では,HB構造の形成は早いが,ひずみ量が増大するほどにHB構造の断絶が発生しやすく,このようなHB構造の推移がHBを有する複合材料の導電性に影響することを明らかにした.また,特に低粘度分散媒において,せん断速度が大きい程,HB間の隙間が小さくなる傾向になることが分かった.しかし,この機能性材料の特徴である導電性の異方性への寄与,特にHBと平行方向の導通性の向上が十分でなく,さらに新たな手法の開発を試み,その有効性を検証した. 最初に,往復運動におけるストロークを長くすることにより,これまでHBが形成されなかったある程度高い体積分率の分散系でも,形成できることを明らかにした.続いて,CNTの体積分率を3倍上げて,高密度なHBの形成を試みたが,一定せん断速度の流れを加えただけでは,HBが形成されなかった.そこで,高いせん断速度を加えた後に,低いせん断速度を加える二段のせん断速度を加える手法を開発して,試行し,HBの形成に成功した.また,そのHBと平行方向の導電性は,これまでの結果に比べ10倍程度上昇することが明らかになった. このように,本研究から,CNTによるHBの形成条件を変化させる事により,より秩序性が高い紐状構造ができることを明らかにしており,CNTを用いた機能性構造材料の開発に新たな方向性を示すことができた.
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