研究実績の概要 |
最終年度(平成27年度)に実施した内容は以下の通りある. [1]表面物理と接触力学との連成については,吸着を伴う接触における内部エネルギーを考え,これを接触半径の摂動に対する変分原理から支配される押込み荷重と押込み変位の関係式を得た.そして,表面物理における熱力学的考察を行い,2つの物理が連成するマルチフィジクス問題としての定式化を行った.また,圧子形状に依存した定式化もあわせて検討し,その影響について定量化した.つぎに,[2]生体試料への適用については,表面性状がより平坦なサンプル作成が可能になり,その結果ヤング率のばらつきが大幅に減少し,糖化することによる歯牙の異なる部位におけるヤング率や硬度の違いを測定した. 研究期間全体を通じて実施した成果については,以下の通りである. 従来より吸着を伴う接触力学には,Johnson,, Kendall and RobertsのJKR理論(1971)と,Dejaguin, Muller and ToporovのDMT理論(1975)がある.両者の理論を精査することにより,その類似性を明確にし,実現象への適用にあたっての問題点を明らかにしたことは学術的に意義深い.まだ萌芽的な理論的考察のみで論文化はできていないが,口頭発表等によりその成果を公開した.つぎに,その吸着が顕著と思われる生体材料を対象にして,押込み試験を実施した.水分を含むサンプルは局所的な特性評価がかなり困難であるが,固化させる技術によってばらつきを大幅に低減できたことは,試験精度の向上に大きく貢献した.この結果の解釈にあたって,前述の吸着を伴う接触問題のアプローチを今後適用させる道筋をたてることができた.
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