研究課題/領域番号 |
26630014
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
田中 啓介 名城大学, 理工学部, 教授 (80026244)
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研究分担者 |
來海 博央 名城大学, 理工学部, 教授 (30324453)
菖蒲 敬久 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (90425562)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 疲労 / 樹脂複合材料 / 応力評価 / 放射光イメージング |
研究実績の概要 |
1.短繊維強化樹脂(SFRP)のマクロな内部応力を、母材の結晶性の熱可塑性樹脂の応力のX線測定から評価する手法を、繊維配向が揃った射出成形平板のスキン層に適用し、反射X線を利用したsin2ψ法の側傾法により測定することに成功した。このとき、母相応力からマクロ応力に変換するときに必要な応力分配係数について、実験的に求めた値は、マイクロメカニックスを用いて予測した値とほぼ一致を示した。 2.SFRP部材の内部の応力を測定するためには透過X線を使用することが求められる。Spring-8の髙輝度光源を用いて、透過X線を用いた並傾法によりsin2y法による応力測定を行った。透過法によっても精度高く応力分配係数を決定することができた。これより、部材内部の応力評価の可能性が確認できた。 3.髙エネルギ放射光30keVを使用して、FRPなどの内部の繊維配向を非破壊で評価する手法を検討した。通常のコントラストによる測定は炭素繊維では吸収係数の差が小さいため困難であったが、ガラス繊維の場合には可能であった。炭素繊維は単結晶であるため、炭素繊維の配向性を回折X線強度の分布から評価できる可能性が見つかった。 4.疲労き裂の進展速度と応力拡大係数の間に成立するべき乗則に及ぼす繊維配向および応力比の影響を検討した。繊維配向と応力比の影響は、き裂進展駆動力としてエネルギ解放率をヤング率で割った商をパラメータとするとこれらの影響は小さくなりほぼ単一の関係となる。 5.観察されたき裂の形状と応力分布から、き裂の進展方向および進展速度を予測することが必要であるが、き裂進展駆動力として、等方性および異方性弾性で求めた応力拡大係数およびエネルギ解放率を検討した。混合モードで進展するき裂に対しても適用が可能であることが予想できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.応力評価に関して、光源としては放射光を用いることによって従来の反射法のみならず、透過法によっても応力測定が可能になった。このため,部品内部の任意の位置にゲージ体積を絞ることの可能性が拓けて,部材内部の局所の応力評価に対するめどが立った.この点において目的が達成された. 2.繊維配向が弾性定数に及ぼす影響に関して,繊維配向テンソルを用いて,繊維配向状態を表し,それを元にSFRP平板の異方性弾性定数を評価することが可能となった.この手法は任意の繊維配向を定量的に予測できる可能性があり、配向の測定を元にした応力評価のための基礎となる。 3.繊維配向の内部のイメージングに関して,ゲージ体積のスキャンニング法の手順がほぼ確立し始めている.これにより内部の配向の非破壊評価が可能になるであろう. 4.き裂裂進展方向および速度に及ぼす繊維配向,応力比の影響の影響に関してはデータの蓄積が行われた.このため,き裂形状、負荷応力状態、繊維配向をもとにき裂進展方向および進展方向の予測法への展開の基礎が出来たと見なされる。
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今後の研究の推進方策 |
1.X線法による応力評価に関して,放射光を利用して透過法により,ゲージ体積を減点した局所応力測定法を発展させ、実部品への提供を可能にする。肉厚部品における内部の3次元測定法、き裂近傍のような急峻な応力勾配領域の分布測定への展開をはかる。 2.部品内部の繊維配向の主軸方向を、髙エネルギ放射光による回折図形をもとに推定する手法を確立する。この手法で求められた3主軸方向に対して、主軸方向の応力評価を行いついで応力分配係数を用いて、3軸のマクロ応力を評価する手法に発展させる。 3.疲労き裂進展に及ぼす射出成形平板の板厚の影響を実験的に検討する。板厚は1mm, 2mm, 3mmと実用部品板厚の範囲の3種類であり、異なる板厚でのき裂進展を、板厚内部の繊維配向を基に予測する手法を確立する。 4.繊維の配向テンソルの板厚内部での分布を実験的に求め、異方性弾性定数を前年度で開発した手法で予測する。実験結果との比較を通して手法の確立を行う。 5.SFRPは実部品はエンジン周り部品への適用も検討されているため、疲労き裂進展挙動への温度の影響を明らかにする。試験温度は最高を130度として、ガラス転移点(約90度)を挟んで70度、100度の3温度レベルでの疲労き裂進展試験を行い、温度がき裂進展挙動に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験試験片の作成費用として使用予定していた。試験片の形状の変更により、作成が予定より長引き、年度末までに納品されなかった。試験片は、次年度の初頭には納品の予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに発注済みの試験片が次年度はじめに納品予定であり、その支払いの費用に充当する予定である。
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