研究課題/領域番号 |
26630026
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
有馬 健太 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10324807)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超精密加工 / 触媒 / グラフェン / 電気化学 / 超純水 |
研究実績の概要 |
次世代の高性能半導体デバイスを実現するためには、シリコン(Si)を超える電子物性を持つ半導体基板の導入が不可欠である。しかし、ゲルマニウム(Ge)に代表されるこれらの次世代半導体基板に対する表面平坦化技術は稚拙である。本研究では、金属元素を全く含まない、炭素(C)原子をベースとした触媒工具を開発する。そして、次世代半導体表面に適用でき、金属除去のための高濃度薬液による後洗浄をも必要としない、超精密な平坦化法の創出を目指している。 本年度は、C系触媒の性能を上げることに注力した。具体的には、強還元剤であるヒドラジンをベースとした溶液処理による酸化グラフェンの還元に取り組んだ。また熱化学気相成長法(熱CVD法)における実験条件を最適化することにより、グラフェンへの異種元素(窒素(N)原子)のドーピング量やN原子の配位位置が制御できることを見出した。また、得られたグラフェンの酸素還元活性を電気化学的に評価することにも取り組んだ。すなわち、Linear Sweep Voltammetry法と回転電極法を組み合わせることにより、各種触媒材料が発現する酸素還元反応における反応電子数を電極電位毎に導出した。その結果、理想的な四電子反応が起こりやすい順に並べると、白金(Pt)、窒素ドープグラフェン、還元グラフェン、グラッシーカーボンになることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、C系触媒の性能向上のためのプロセス開発及び、電気化学的な手法に基づく特性評価について、ほぼ予定通り進めることができた。そのため、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
開発したグラフェン触媒による半導体表面のエッチング特性(加工速度や加工痕)をナノスケールで観察する。さらに、用いるグラフェン触媒の種類によって、半導体表面のエッチング特性がどのように変化するかを明らかにする。以上の結果に基づき、グラフェン触媒による半導体表面のエッチングメカニズムを分子レベルで考察する。また、これらの触媒からなる工具を具現化し、半導体表面の加工に適用していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度取り組んだ、酸化グラフェンの還元方法について、当初は専用のランプ加熱装置を準備し、熱処理により行う必要があると考えていた。しかし他者の研究情報を調査した結果、強還元剤を用いた液相での還元が有効であることを新たに知り、これを試した結果、思いがけず良い結果を得た。この湿式処理を準備するにあたり、当初の熱処理に比べると初期投資費用が大幅に抑えられたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
提案した触媒工具を具現化するための、消耗品費(電気回路部品、真空部品、樹脂製配管部品、高純度薬品・試料・ガス)に充てると共に、得られた成果を積極的に外部発表するための英文校閲費及び学会参加費・旅費に用いたいと考えている。また、得られた電気化学測定や電子分光測定の結果を整理・解析するための研究協力者への謝金にも一部を充てたいと考えている。
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