研究課題/領域番号 |
26630046
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
武居 昌宏 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90277385)
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研究分担者 |
中村 匡徳 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20448046)
丸山 修 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究グループ長 (30358064)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 混相流 / バイオ流体力学 |
研究実績の概要 |
本研究では、誘電緩和法において、1.微小血栓形成時の緩和周波数を求め、その周波数を用いて微弱な交流電圧を血流に印加し、血栓形成時の電気特性から、微小血栓検出が可能なオンライン検出法の確立、2.粘性流体-赤血球構造連成計算法を導入し、高せん断場の血球膜が破壊して微小血栓を形成する要因を推定可能な手法の確立、の二つの方法を融合させ、血栓形成原因の力学的な検討を行い、実験とシミュレーション結果を精査し、人工臓器の微小血栓を早期に検出し原因探索できる融合システムの実用化可能性を見出すことを目的とする。 本年度の実施内容は以下の通りである。実施項目1-(1)「センサ付補助人工心臓の製作」センサ付補助人工心臓を設計し製作した。実施項目2-(1)「血球膜破断モデリング」スペクトリン細胞骨格構造に着目し、これに脂質二重層の面積制約抵抗および曲げ剛性、さらに両者の間をつなぐ膜貫通タンパクを相対速度に対する抵抗として組み込むことにより、高速な動的変形をも再現しうる粘弾性体の赤血球膜モデルを構築した。実施項目2-(2)「シミュレーションテスト」高速流動場と赤血球の力学相互作用問題を取り扱える計算手法、および、溶血問題を取り扱える計算手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実施項目1-(1)「センサ付補助人工心臓の製作」高速電極スイッチングが可能で、ノイズが軽減された高感度のセンサを製作できた。 実施項目2-(1)「血球膜破断モデリング」赤血球膜の基本的な力学的特性が表現できた。 実施項目2-(2)「シミュレーションテスト」流体中の赤血球運動の基本特性が表現できた。 本年度実施予定だった、実施項目1-(2)「静止状態における微小血栓検出実験と検証」と実施項目1-(3)「血液循環流路の構築とテスト」は実験室の大掛かりな工事のため本年度は実施できなかったため来年度に行う。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は、ステージ2の未実施項目とステージ3「人工臓器内の高せん断場血栓検出と赤血球膜破断シミュレーション」を行う。具体的な計画は以下の通りである。 実施項目1-(2)「静止状態における微小血栓検出実験と検証」フィブリン単体の静的電気特性を計測し基準とし、緩和周波数を特定する。新鮮動物血のヘマトクリット、凝固剤量、抗凝固剤量をパラメータとして、微小血栓量と電気特性を計測する。検出アルゴリズムから、微小血栓の大きさと個数を求め、顕微鏡により検証する。実施項目1-(3)「血液循環流路の構築とテスト」センサ付補助人工心臓を有する閉じた血液凝固実験流路を構築した。流速分布と温度を制御し血液を循環させる。流動中おいて、ポンプ回転数、圧力、血液流量をパラメータとし、1-(2)の条件で、血栓形成時の電気特性を予備的に計測する。実施項目3-(1)「新鮮動物血を用いた血栓検出実験」誘電緩和法を用いて、ウシ新鮮血100検体を用いて、1-(2)と1-(3)の実験条件のもとで、ポンプ回転数、圧力、血液流量を変化させて、微小血栓形成時の電気特性のデータベースを構築する。検出アルゴリズムにより微小血栓の大きさと個数を推定し、データベースを構築する。 実施項目3-(2)「赤血球膜破断シミュレーション」3-(1)のデータベースを基にして、ヘマトクリット、せん断力分布、血漿粘度、流量などをパラメータとして、赤血球膜破断シミュレーションを行う。実験結果とシミュレーション結果との比較を行い、精度の検討を行う。 実施項目3-(3)「人工臓器設計指針まとめと血栓形成検出・分析融合システムの実用化の検討」血栓形成原因の力学的な検討を行い、実験とシミュレーション結果を精査し、人工臓器設計のひとつの指針をまとめる。微小血栓の早期検出と原因探索可能な融合システムの実用化可能性と有効性を検討する。研究会を開催し、社会的評価を受ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、研究分担者の実験実施場所である産業技術総合研究所で、電気設備修繕における大がかりな工事があり、2度にわたる実験室の移動が必要となった。そのため、実験が大幅に遅延した。実験に関しては、すべて研究計画通りに進行できることを確認しており、予定されていた研究を達成するべくペースを上げたが、年度内の実験計画を終了することができなかった。そのため、達成し得なかった研究計画に相当する研究費を、次年度に繰り越しする必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に実施し得なかった、新鮮動物血を使用した血栓形成時におけるインピーダンス計測、および栓子の直接観察を行い、両者の関係を相関づける。また、血液流動状態において、血流条件(ポンプ圧力差、血液流量)を変更し、インピーダンス測定ならびに、血液流動回路内の栓子の計測および直接観察を行う。それに関わる研究補助員、消耗品、および、成果発表の旅費に使用する予定である。
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