本研究では,気体としての水分子,つまり水蒸気のマイクロスケールにおける流動特性を解明することを目指す.マイクロ流路を通過する流量を実験的に計測し,マイクロ流路に様々な材料を用いて流量の比較を実施していく.さらに,マイクロ流路を通過する流量が気体分子と固体表面との相互作用に強く依存する高クヌッセン数流れとなる領域を利用して,相互作用の強さを表すパラメータである接線方向運動量適応係数を導出することで,水分子の固体表面近傍における挙動を解明していく. 計測においては水分子以外の気体が混入することも考えられ,混合ガスとなることに依って結果が影響を受けることも否定できない.そのため,質量の大きく異なるヘリウムとアルゴンの混合ガスにおいて,混合比を変えたときの影響を計測した.混合ガスにおいては接線方向運動量適応係数に相当する粘性滑り係数を求めたが,混合比によって大きく変化することが明らかとなった.そのため,気体の混入は計測結果を大きく左右することが判明した. そこで,改めて飽和蒸気圧を利用して水分子を供給し,純度の高い水分子に対する接線方向運動量適応係数の計測を行い,単原子分子気体であるヘリウム,ほぼ同じ質量を持つネオン,そしてアルゴンと比較を行った.その結果,単原子分子気体が示す傾向とは少し異なり,接線方向運動量適応係数,つまり流路内の流れやすさが分子量では整理できない特異な性質を示すことを明らかにした.
|