研究課題/領域番号 |
26630053
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小森 悟 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60127082)
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研究分担者 |
黒瀬 良一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70371622)
高垣 直尚 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00554221)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 流体工学 |
研究実績の概要 |
既往研究においては海表面に存在する重油等の汚染物質が気液界面を通しての運動量およびスカラ(物質および熱)の乱流輸送に大きな影響を及ぼすが,その理由は汚染物質による表面張力の変化にあるとされてきた.しかし,これを実証した研究はなく,汚染物質による液相表面の液の粘性の変化の影響もあると考えられる.そこで,本研究では小型風波乱流水槽を製作し,水槽中の液の表面張力および粘性係数を種々に変えた場合の風波乱流場で乱流計測を行い,表面張力および粘性が風波乱流に及ぼす効果を明らかにすることを目的とする.さらに,表面張力および粘性の効果の観点から台風等のサイクロンを弱体化させるためには海面上に如何なる物質を広範囲に散布するのが適切であるかについての弱体化計画を提案することをめざす.
今年度は,表面張力および粘性係数を種々に変えた場合の風波乱流場での乱流計測を行うための,閉鎖回流型水槽を作成し,また水面変動を高精度で測定可能な静電容量方式波高計の選定・購入を行った.さらに,表面張力の違いが水位変動に及ぼす影響を観察するために,フィルタ水および30wt%エタノール水溶液を,粘性係数の違いが水位変動に及ぼす影響を観察するために,フィルタ水および60wt%グリセリン水溶液を使用した.これらの結果より,表面張力が低い場合もしくは粘性係数が低い場合に水位変動は大きいことが確認された.さらに,界面活性剤の水位変動に及ぼす影響を確認するために,フィルタ水および界面活性剤であるTriton-X100を微量に混合させた水溶液を使用し,水位変動の計測を行った.その結果,従来より確認されていた界面活性剤の混合に起因する水位変動の減少が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,閉鎖回流型水槽の開発および水位変動計測器の選定を無事に終え,さらに,実験の第1段階となる表面張力・粘性係数の違いがどのように水位変動に影響を及ぼすか確認することができた.さらに,従来より確認されていた界面活性剤の混合に起因する水位変動の減少が確認された.したがって,当初の計画通りおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,界面活性剤の混合により引き起こされる水位変動の減少のメカニズムを解明することを目的とする.具体的には,本メカニズムは界面活性剤を混合した水溶液が非ニュートン流体の特性を持つ影響により説明できる可能性がある.そのため,レオメータを使用し,界面活性剤混和溶液の粘弾性特性の検証を行う.また,表面張力の変化がいかに風波の発達に影響を及ぼすかを検証するために,界面追跡手法としてArbitrary Lagrangian and Eulerian法を採用した直接数値計算を実施する.さらに,界面活性剤の特性を用いた台風の弱体化案の提案を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,室内実験結果の妥当性についての検証に多くの時間を必要とした.そのため,当初計画していた界面の追跡手法としてALE(Arbitrary Lagrangian and Eulerian)法を使用した直接数値計算を実施することができなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
表面張力および粘性係数を変更可能なALE法を適用した直接数値計算コードを作成する.さらに,直接数値計算により得られた界面近傍の微小な流動場の観察を行うことにより,表面張力および粘性係数がいかに流動場に影響を及ぼし,かつ水位変動を低下させるのかを検証する.これらのために,本年度持ち越した助成金をコンピュータ使用代金およびデータ保管用のハードディスク購入代金等,および追加実験費用として使用する。
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