研究実績の概要 |
本研究は,極めて複雑かつ微細な3次元形状を特徴とする鼻腔内の流れと熱物質輸送を,医用画像の直交格子を直接利用して簡易に解析する手法を確立し,鼻腔の嗅覚機能,吸入空気の加温・加湿機能,及び異物除去機能を評価する新規の鼻腔形成手術アセスメントを提案・実現することを目的とする. 本年度は,医療用CT及びMRI画像から3次元実形状鼻腔モデルを作成してボクセル格子法を用いた鼻腔内熱流動解析を実施し, モデル形状及び流れ場と温度場の解析精度を調査した.ボクセル格子法は, 境界適合格子と非構造格子を組み合わせる従来法と比較すると, 格子生成に掛かるコストが大幅に削減されるが, 形状近似精度や境界層の解像度などに問題が生じる.ボクセルピッチを変化させた際に鼻腔壁面近くの形状, 境界層の解像度が流れ場と温度場に及ぼす影響を考察した結果,ボクセルピッチを0.10~0.20mmまで細分化することにより,鼻腔内気流の圧力損失及び温度上昇を比較的精度よく再現可能であることを明らかにした. また,粗い解像度の画像を用いた場合の鼻腔壁面の凹凸を平滑化するため,流路と鼻腔壁面の境界に画像補間を施し,ボクセル熱流動解析における画像補間の有効性について検討した.その結果,横断面画像をボクセルピッチと同程度の解像度で二次元線形補間することにより,画像の解像度が粗い場合でもボクセル格子法により従来の境界適合格子法と同等に圧力損失及び温度上昇を再現可能であることを明らかにした.
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