固液界面に付着するさまざまな「汚れ」は,液体を利用する熱機器の伝熱性能に直接的に影響するとともに,熱機器の微小化に伴って考慮すべき重要な工学的問題となっているが,固液界面に付着する汚れの堆積メカニズムやその微細構造の詳細は明らかにされておらず,また,汚れの固液界面熱抵抗への影響についての一般的な学理も確立されていない.本研究では,固液界面に汚れが堆積して付着するメカニズムとその微視的構造を明らかにするとともに,汚れが固液界面熱抵抗に及ぼす影響について明らかにすることを目的とすることとした. 平成26年度は液体中に分散する微粒子の固液界面への堆積過程における界面熱抵抗を測定すべく試験装置の設計と製作を行った.本測定試験に使用する作動流体として,アルカリ硝酸塩と亜硝酸塩を混合した溶融塩にナノ粒子を懸濁させた高温ナノ流体を作製した.固液界面熱抵抗の評価法には,固相と液相の温度分布を計測する温度傾斜法を採用した. 平成27年度は本測定を実施し,固液界面に粒子が堆積することにより固液界面熱抵抗が変化し得ることが示された.さらに,固液界面の汚れ堆積の基礎過程と影響を調査するため,分子動力学法を用いた数値シミュレーションを実施した.具体的には固液界面におけるナノ粒子の付着状態やナノ粒子層が固液界面熱抵抗に与える影響を数値的に調査した.ナノ粒子に対する対象液体の濡れ性と関係する分子間相互作用強さが強い際には,ナノ粒子層が付着することでフラット面よりも界面熱抵抗が低下することが明らかとなった.また,ナノ粒子層が積層化することで界面熱抵抗が増加し,フラット面よりも界面熱抵抗が高くなる結果を得た. このようにナノ粒子の濡れ性や層構造による界面熱抵抗の変化量と変化特性を明らかにすることで,微粒子が固液界面に堆積することより固液界面熱抵抗に及ぼす影響についての理解が進展したと考えられる.
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