研究課題
固液界面の特異な熱現象の探求のために液体中で使用可能なナノプローブ熱計測システムの開発に取り組んだ。原子間力顕微鏡で通常用いられる普及型カンチレバー上に白金薄膜の温度センサー兼ヒーターを製作し、液体中での断熱性能を確保するためにPTFEをカンチレバー全体にコーティングした。多層カーボンナノチューブを最適な探針へと加工すべく集束イオンビームの照射による外周部のアモルファス化と中心部だけ残すエッチングについて開発を試みたが、再現性の悪さを克服するまでに至らず、本研究期間内に製作法を確立することはできなかった。一方で、通常のシリコン探針をそのまま用いたほうが液中においても熱計測性能が良い場合が多いことを数値計算で確認した。なお、その先端のPTFE膜は温度計測の前段階の表面走査で磨滅するために熱抵抗とはならないこともわかった。この通常型シリコン探針はコスト的にも有利であるので、それを用いて液中走査型熱顕微鏡としての性能実験を行った。対象は基板に蒸着した白金薄膜を長さ10ミクロン・幅500nm程度にパターニングしたもので1mW程度の電力を与えて発熱させながら定常状態での温度分布を純水中で計測した。適当な補正をかけることで0.1Kの精度で液中の固体面上温度分布が計測できることがわかった。ただし、今回製作したシステムではカンチレバーホルダーの熱容量が大きく断熱も不十分であることから温度が安定するまでに10分以上かかってしまうという欠点があり、多点計測のためには普及型カンチレバーに熱的な改善を施す必要があることもわかった。
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