本研究では線径が15ミクロン,直径が100ミクロン程度のコイルばねと質量による1自由度振動系を構築し,この微小振動系の振動制御を行うことを目的とした.まず,初期変位を与えた自由振動実験を空気中および真空中で行い,その減衰曲線から減衰比を推定した.実験的に変位測定を直接行うことは,対象が小さいために測定器が存在せず困難であるので,顕微鏡と高速度カメラを組み合わせることで実験を行い,理論値との整合性について検討した.その結果,空気抵抗の影響は数%以下であり,特に空気抵抗を考慮する必要がないことを示した.またこの程度の大きさの振動系ならば,従来の理論推定法が適用できることを示した.さらに,初期振幅が減衰に与える影響を定量的に明らかにした. 界面電解現象を利用した可変減衰要素の開発も本研究のもう一つの目的である.半導体に電圧を加えることで半導体と導体質量の間にクーロン力に基づく引力が発生し,その摩擦抵抗力の大きさを検討した.当初は加える電圧の大きさによって摩擦抵抗力を制御できると考えていたが,半導体を質量に一定の力で接触させることが難しく,摩擦減衰力を与えられることは実験的に示したが,その変化を取り出すことができなかった.今回は球形の質量に対して,平面をもつ半導体を接触させて実験を試みたが,接触させる物体の形状をさらに工夫する必要があること,また一定力で押しつける機構を新たに開発する必要があることを明らかにした.
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