研究課題
これまで,操作者が力覚を感じながら遠隔地に存在するロボットの位置・姿勢を操作する遠隔制御には,世界中の研究者が取組んできた.しかしながら,最も典型的な応用例とされる「レスキューロボット」や「手術支援ロボット」に対しても,未だに実用化された例はない.理由の一つは,従来提案された理論・手法が現実の現象に対して未だ十分ではないことである.ネットワーク通信遅延を含んだ現実の制御対象に対して,実用的なマスター・スレーブシステムを構築するためには3つの要素を含んだムダ時間系の安定理論が必要となる.すなわち,非線形・非受動・マルチラテラルである.本研究はこの未踏の問題を克服した上で,手術支援ロボットの遠隔操作に対する有用性を実証しようとするものである.これまでの研究成果として,1.非受動な制御対象に対するマルチラテラル遠隔制御安定性の証明の完了,および2.遠隔手術支援ロボットの動力学の特性が明らかとなりつつある.1.は,左半平面有界なベクトル軌跡をもつ線形制御システムにおいて,マルチラテラル安定性を確保できることの証明が完了できた.これにより,内臓など術部を介して力の干渉が内部で複雑に発生する手術においても,多方向からのマスター・スレーブシステムが安定に動作できることが明かとなった.2.はこれまで不明であった手術支援ロボットの運動とセンサーで検知できる力の関係を明かにすることができた.手術支援ロボットは衛生上の理由によりセンサーを術野近傍に設置できないことから,運動と力に関しての明確なモデル化を行うことが課題であった.
2: おおむね順調に進展している
非受動な制御対象に対するマルチラテラル遠隔制御の安定化理論を確立することができた点,遠隔手術支援ロボットの動力学特性がおおむね明らかとなったことから上記のように判定した.
今後の研究の推進方策は3点ある.1.今回確立した安定化理論を,非線形の対象まで広げること,2.当該安定化理論を実際の手術支援ロボットにプログラムとして組み込む点,3.豊橋技科大―東京医科歯科大間をネットワーク回線で接続し,実際に遠隔手術が可能である事を実証する点.である.当初予定の流体の流れ場・心臓の鼓動を模した実験装置は費用的な理由により計画を変更し,非線形な弾性体(内臓を模したジェルなど)を対象として手術が可能であることを実証することとする.
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Robotics and Mechatronics
巻: 26(1) ページ: 112-114
日本バーチャルリアリティ学会論文誌
巻: 19(4) ページ: 559-569
http://www.sycon.me.tut.ac.jp/nct_partnership/index.html