研究課題/領域番号 |
26630080
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
細矢 直基 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40344957)
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研究分担者 |
梶原 逸朗 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60224416)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Lamb波 / 損傷検知 / レーザーアブレーション / レーザーブレイクダウン / 衝撃波 |
研究実績の概要 |
所望の振幅で複数モードのLamb波を,非接触かつ非破壊で,任意の複数箇所で同時に生成することで,航空機構造に対して広範囲かつ高効率な損傷検知を実現する.超音波プローブなどにより単一モードのLamb波を生成する方法が広く用いられているが,Lamb波の振幅の大きさや対象構造上の生成位置に制約があり,航空機構造には対応できない.本研究では,高い再現性を有するレーザー誘起プラズマによる衝撃波をインパルス入力として作用させることで,あえて複数モードのLamb波を任意の複数箇所で同時に生成し,これによる損傷検知を実現する.従来不可能であった航空機構造の広域損傷検知を高精度・短時間で実現できれば,整備効率・運航効率向上につながることから,実際にエアライン各社から大きな期待が寄せられている. 平成26年度にレーザーアブレーションを用いることで,超ジュラルミン薄板へのLamb波生成を実現できた.しかし,レーザーアブレーションはレーザー被照射部に動特性に影響しない程度の小さなクレーターを生成する問題があった.そこで,平成27年度は,レーザー被照射部に小片を取り付け,このクレーターの生成を防ぐことで,本手法を損傷検知に利用できるような手法へ発展させた.また,レーザーブレイクダウンにより生成された衝撃波により,超ジュラルミン薄板に非接触かつ非破壊でLamb波を生成することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,航空機のような大型構造物に対する広域損傷検知を実現するための新たな手法として,レーザーアブレーションによるインパルス加振力により対象構造にLamb波を非接触に生成し,これによる応答をスキャニングレーザードップラー振動計で計測する,損傷検知法を実現できた. 平成27年度は,レーザーアブレーションによる対象構造の損傷を防止し,本手法をより実用的な手法へと発展させるために,(1)対象構造のレーザー被照射部に小片を貼付することで,レーザーアブレーションによる損傷を防止する方法を検討した.そして,この小片の形状や大きさと生成されるLamb波との関係を調べることで,Lamb波の生成において適切な小片の条件を明らかにした.また,(2)レーザーブレイクダウン衝撃波により超ジュラルミン薄板に非接触かつ非破壊でLamb波の生成を実現すると共に,Lamb波を生成するための適切なレーザーフルエンスなどの実験条件を調べた.(1)および(2)の条件において人工的な貫通亀裂を損傷として設けた超ジュラルミン薄板にLamb波を生成し,このLamb波の伝播を解析することで,本手法によりこの損傷を検知できることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,本研究の成果を研究論文としてまとめ,これを国際的なジャーナルに投稿することで,本研究により得られた知見を公表することに努める.また,国内に向けては,研究会などで発表することで対応する.さらに,指向性を有するLamb波の生成についても検討していく.本手法により生成されるLamb波は無指向性であるが,指向性を持たせることができれば,特定の検査エリアに効率的にLamb波を伝播させることが可能となる.本年度は,対象構造におけるレーザーアブレーションの発生場所や数,レーザー光のスポットエリアの形状を工夫することで,指向性を有するLamb波の生成を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的をより精緻に達成するためには,本研究で得られた成果を国際的なジャーナルに論文として投稿し,国内外に公表しなければならない.そのため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で得られた成果を,国際的なジャーナルに投稿する論文の翻訳・校正,投稿料などに使用する.また,国際会議に参加するための旅費としても使用する. 指向性を有するLamb波の生成について検討するために,光学部品や実験資材などの購入も計画している.
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