本研究では,航空機のような大型構造物に対する広域損傷検知を実現することを目指し,高出力Nd: YAGパルスレーザーを対象構造物表面に照射しレーザーアブレーションを発生させ,これによるインパルス加振力を用いてLamb波を生成し,応答をレーザードップラー振動計で計測することで,入出力を非接触とした損傷検知システムを構築した. レーザーアブレーションにより生成されるLamb波に対してスペクトル解析を行ったところ,このLamb波は数百kHz程度の広周波数帯域の成分を含んでいることを明らかにした.また,このLamb波の各周波数帯域における伝播速度と理論的に得られた伝播速度とを比較したところ,最大で約4%の誤差であることがわかった.したがって,本システムによりLamb波を生成できる. レーザーアブレーションにより生成されるLamb波は,従来のレーザー熱弾性により生成されるLamb波に比べ,生成されるLamb波の振幅が数百倍程度と大きいため,計測におけるSN比が良く計測時の平均化回数を大幅に低減できることから,短時間での計測が実現できる.これより,本手法は大型構造物の広域損傷検知に利用できる. レーザーアブレーションにより生成されたLamb波を,貫通亀裂を損傷と想定した損傷検知に適用したところ,このLamb波は,損傷部で反射したり,損傷部通過前後における振幅が変化したりすることがわかった.したがって,これらを観察することでレーザーアブレーションにより生成されたLamb波は損傷検知に利用できる.
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