研究課題/領域番号 |
26630081
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
辻内 伸好 同志社大学, 理工学部, 教授 (60257798)
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研究分担者 |
伊藤 彰人 同志社大学, 理工学部, 准教授 (60516946)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リハビリテーション / バイオメカニクス / 筋骨格モデル |
研究実績の概要 |
日本には,約80万人の関節リウマチ患者がいるとされ,手指の症状では指の変形や脱臼が起きる.治療にはハンドセラピーによるリハビリがあるが,それを行うセラピストの数は不足している.先行研究において,初期の関節リウマチの症状である母指の中手指節(MP)関節の亜脱臼をリハビリする装置が開発された.これは空気圧アクチュエータにより治療を行う装置であり,これを用いて,患者5人の内,4人で成功している.この装置でのリハビリをよりハンドセラピーによるリハビリに近づけるためには,実際のリハビリ時のセラピストが与える力の大きさや作用点の計測が必要である.そのため,リハビリを計測する手段を提案し,第一段階として,実験者(セラピストでない医師の指導を受けた者)が健常者を対象に提案した計測法にてリハビリの模擬動作計測を行った. 以下に本研究で得られた結論を示す. (1)ハンドセラピーによるリハビリ動作の計測法を提案した.(2)提案した方法により,健常者に対して,力の大きさや作用点位置,押し上げ量が計測できた.(3)牽引ありのリハビリ動作は牽引なしに比べ,リハビリ効果が高いことが得られた.(4)健常者で算出したリハビリ力は患者でも有効であると考えられ,装置にて再現可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,拇指亜脱臼症状を伴うリウマチ症状の計測手法の確立と精度検証を実施する計画であった.健常者に対する検証であるが,14名に対して実験を行い,関節牽引の有効性を実証するとともに,整復力の大きさ,作用点位置,実際の押上量を計測することができた.提案した指の運動計測手法により,関節の変位量と作用力が定量的に計測できたため,関節の剛性を推定することが可能となった.この計測データを元に,次年度計画しているシミュレーションプログラムSIMMによるモデル化を実施することが可能である.現在,SIMMのハンドモデルを構築中で有り,関節剛性として,推定された剛性値を利用することができる.罹患者に対する計測はできなかったが,おおむね計画通りに推移している.
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今後の研究の推進方策 |
任意の関節まわりに解剖学的走行と一致するように筋要素を組み込んだ筋骨格モデルを用いて,リウマチハンドセラピーのシミュレーション機能モデルを構築する.Hillタイプの筋要素には筋の生理学的な特性(力-長さ関係,力―速さ関係,最大発生筋張力,筋活性度など)が組み込まれており,筋張力とモーメントアームの外積である筋モーメントの総和がその関節の筋に由来するモーメントとなる.この筋骨格モデルでは逆動力学解析で得られた関節モーメントから,筋に由来するモーメントや各筋にはたらく筋張力を推定できる.このモデルを用いるとすべての筋張力を物理・数学的手法で推定することが可能であり,「亜脱臼」状態を表現するために最も重要な筋張力を考慮した関節間力を算出できる. 実験結果とシミュレーション結果を比較することによって,リウマチの諸症状に対するリウマチハンドセラピーのシミュレーション機能モデルの精度を検証する.有効性が確認されれば,機能モデルを用いてリウマチの治療効果の定量的評価とともに,治療法の体系化が可能となる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に,各指の運動を含む「手の運動計測システム」の試作を検討している.加速度,ジャイロ,地磁気を一体化した最新ICチップの購入が本年度間に合わなかったため,次年度に繰り越し,試作費に充当する.
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次年度使用額の使用計画 |
「手の運動計測システム」の試作費および,搭載予定のCPUからのインターフェイス用ソフトウェアの開発費用に充当する.
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