研究課題
ヒトが道具に加わる微細な力をあたかも身体の一部のように感じながら操ること(=身体の延長)ができる理由を探求し,皮膚の分布的な触覚の関与と役割を実証することを目的として研究をおこなった.具体的には,(1)心理物理実験による「身体の延長」の知覚能力の検証,(2)皮膚の分布圧計測と多点接触モデリング,および(3)吸引触覚ディスプレイによる触覚分布の再現・拡張によって,分布的な触覚が「身体の延長」に貢献していることを実証する.さらに,得られたメカニズムを元に,道具に加わる触覚をより高感度に増強する新しい触覚デザイン法を考案することを目標とする.当該年度は,把持した棒状の道具に加わる外力の知覚能力を,心理物理実験と皮膚の分布圧測定によって実測し,吸引圧触覚ディスプレイによって人工的に再現・加工することにより,「身体の延長」に対する触覚の機能と役割を構成論的に実証した.具体的には,ペン状の物体を把持した際の,接触の分布圧を計測する装置を開発するために,外力と分布圧の関係を剛体の多点接触モデルにより近似し,吸引圧により,外力を加えずに皮膚刺激を与える触覚ディスプレイを開発した.また,外力付与時の接触分布圧の変化を,吸引式触覚ディスプレイによって再現し,その際に得られる外力の知覚方向および強度を心理物理実験によって計測した.外力を伴わない吸引圧によって,ペン先に加わる外力が知覚されることを検証し,分布圧の変化によって,外力の方向,および強度を制御できることを確認した.
2: おおむね順調に進展している
おおむね交付申請書に記載した計画のとおりに進展している。当初の計画では、心理物理実験によるヒトの「身体の延長」の知覚能力の検証をH26に実施する予定であったが、ヒトの道具に加わる外力の知覚に関して、当初の計画よりも興味深い現象が確認されたため、H27も継続して検証を続ける予定である。
前述のとおり、ヒトの道具に加わる外力知覚に関して、当初の計画では想定していなかった筋活動の関与を現在検証している。H27年は道具を介した感覚を増強する触覚デザイン手法の提案をめざしているが、それに加えて、ヒトの「身体の延長」に関わる知覚メカニズムの検証を継続して実施することで、提案する研究課題のより深い理解をめざす予定である。
「身体の延長」に関するヒトの心理物理実験に新しい結果がでてきたため、実験装置の開発に予定してた物品費の使用が減少した。
H27に当初予定していた実験装置の開発と、前述の追加された項目の実験を行うため、すべて使用する予定である。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
EuroHaptics 2014, Part II, LNCS 8619, Springer-Verlag Berlin Heidelberg
巻: Part II, LNCS 8619 ページ: 285-294
10.1007/978-3-662-44196-1_35
Proc. of AsiaHaptics2014
巻: AsiaHaptics2014 ページ: C-12
http://www.rm.is.tohoku.ac.jp/~konyo/