研究課題/領域番号 |
26630085
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
妻木 勇一 山形大学, 理工学研究科, 教授 (50270814)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 知能機械 / 知能ロボティクス / 海洋生態 |
研究実績の概要 |
動物の生態を観察する方法として,センサやカメラが取り付けられたタグを動物の体に取り付けるバイオロギングサイエンスと呼ばれる手法がある.マッコウクジラに対してもバイオロギングが行われているが,マッコウクジラが潜る1000 m以上の深海は暗く,ライトで照らしても遠くを撮影することはできない.クジラの捕食シーンを撮影することは,動物学の研究者にとってクジラの生態を知るための大きな手掛かりとなる.これを実現するためには,クジラの口元近くにカメラタグを取り付けることが望まれている.そこで本研究では,以下の2つの事項を達成する. (1) クジラの背中に一度取付けられたタグを口元まで移動させることができる移動ロボットを開発する.このロボットをクジラ用ローバーと呼ぶ. (2) クジラ用ローバーの移動エネルギー源として,クジラが泳ぐことで発生する水流を利用する方法を確立する.これを環境駆動型ローバーと呼ぶ. 本年度は,(1)を開発するために,(2)の環境駆動型移動機構を設計・製作した.製作した機構は,CPUやアクチェエータを用いずに水流のみを利用してローバーを移動させる機構である.水流を駆動エネルギーに変換するためのスクリュー,クジラ表面に吸着するための8個の吸盤,吸盤の吸排気を行うためのカムとそのタイミングを調整するための欠け歯車などから構成した.一方,従来は,クジラの背後から船で近づき,長い竿の先に取り付けたカメラタグをクジラの背中にたたきつけることで取付けを行っていた.実績のある手法であることから,本研究においても同様の方法を取ることを前提にローバーの開発を進めている.しかし,取付け成功率は高くないので,より確実にクジラに取り付ける方法も求められる.そこで,牽引型水中ロボットの検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
くじらが泳ぐ時の水流を移動エネルギーとして利用する環境駆動型移動機構の製作を行った.軽量化が求められること,また,機構のみで移動できるようにするため,高度な設計が必要とされ,設計・製作に時間が掛かった.年度内に検証実験まで行う予定であったが,来年度上旬にずれ込むため,当初の予定よりもやや遅れ気味である.一方で,取付けの確率を上げるための新たな方法として,牽引型水中ロボットの検討を始めた.クジラに水中から近づくことが出来れば,クジラ用ローバーの取付けが容易になる可能性があり,技術が確立できれば,予定されていた以上の成果が見込める.
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今後の研究の推進方策 |
開発した環境駆動型移動機構の検証実験を学内で行う.また,初夏から初秋にかけて行われる連携研究者らによる羅臼沖または小笠原沖でのクジラ調査に同行し,開発機体のテストを行う.必要に応じて,連携研究者と適宜打合せを行う.現地試験の結果を踏まえ,プロトタイプにさらに改良を加え,クジラ用ローバーの基盤技術を確立する.得られた成果は国内,国外の学会で発表する.なお,必要に応じ,機構やロボットの情報収集のために,関連学会で調査を行う.
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