動物の生態を観察する方法として,センサやカメラが取り付けられたタグを動物の体に取り付けるバイオロギングサイエンスと呼ばれる手法がある.マッコウクジラに対してもバイオロギングが行われているが,マッコウクジラが潜る1000 m以上の深海は暗く,ライトで照らしても遠くを撮影することはできない.クジラの捕食シーンを撮影することは,動物学の研究者にとってクジラの生態を知るための大きな手掛かりとなる.これを実現するためには,クジラの口元近くにカメラタグを取り付けることが望まれている.そこで本研究では,以下の2つの事項を達成する. (1) クジラの背中に一度取付けられたタグを口元まで移動させることができる移動ロボットを開発する.このロボットをクジラ用ローバーと呼ぶ. (2) クジラ用ローバーの移動エネルギー源として,クジラが泳ぐことで発生する水流を利用する方法を確立する.これを環境駆動型ローバーと呼ぶ.
昨年度は,環境駆動型移動機構の第一試作機を設計・製作したが,検証試験の結果,採用した4リンク機構の思案点,駆動元となる二つのプロペラの同期,欠け歯車のタイミングなど,いつかの問題点が発生した.そこで,本年度はこれらの問題を解決した第二試作機を設計・開発した.その後,実験を行い,空中における80度勾配登坂,水中での水平方向移動,垂直方向移動を実現し,基本性能の検証を行った.さらに,確実に機構が動くよう,第3試作,第4試作を行い,最終的にベルトプーリ―を利用した機構を開発した.
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