研究課題/領域番号 |
26630088
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
根岸 みどり(加藤みどり) 東京大学, 生産技術研究所, 研究員 (30300750)
|
研究分担者 |
尾上 弘晃 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30548681)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | マイクロ・ナノデバイス / マイクロマシン / 脳・神経 / 細胞・組織 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
移植を見据えた神経インターフェース開発のため,平成26年度の研究計画は、神経細胞ファイバーを神経幹細胞を利用して作製し、長期的に神経細胞の機能が維持できることを確認する事であった。我々がこれまでに開発した2重同軸層流マイクロデバイスを用い、細胞を封入したコアシェル型のゲルファイバーを神経幹細胞で作製した。神経幹細胞をファイバー内部に封入後、5~7日間培養を行うことで神経幹細胞ファイバーを作製した。その後分化を誘導し、2週間で幹細胞が神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトに分化する事を免疫組織化学染色法で確認した。さらに分化誘導後1~6ヶ月で、刺激電極による刺激が神経ファイバー中を神経細胞を介して伝播する事を確認した。また移植を見据えるため、1年近くの長期培養時での神経細胞の生存率と機能を確認した。分化誘導後も、10ヶ月以上経過しても、神経細胞・オリゴデンドロサイト・アストロサイトが生存し、内部でシナプスを有する神経回路を構築している事が確認出来た。移植などの際に細胞ファイバーの操作性を高め、神経信号伝達を安定化させるため、神経ファイバーを2~48本束ねたバンドル状構造の構築にも取り組んだ。ガラス棒を用いて神経細胞ファイバーをまとめ、生体適合性の高い材料(フィブリンやキトサン、コラーゲン、PEG)で被服することで神経バンドルを構築することに成功した。さらにバンドル内部で神経幹細胞が神経系の細胞に分化し数週間以上生存する事も確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の目的である神経幹細胞ファイバーからの分化誘導による神経ファイバーの確立は成功した。さらに1年近くにわたる長期培養が可能である事が確認出来た。また、操作性を高めるためにファイバーをバンドル化する手法も確立する事が出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、神経幹細胞ファイバーからの分化誘導による神経ファイバーの確立とバンドル構造構築に成功した。次年度は、「神経細胞ファイバーバンドル」の神経インターフェースとしての機能をin vitro およびin vivoで検証する。異なる神経組織間を「神経細胞ファイバーバンドル」を介して神経の信号が伝達されるか、電気生理学的手法やカルシウムイメージング、組織学的手法により検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、in vitroの実験による神経ファイバーの基礎的な解析が主であり、動物を用いた実験などには至らなかったため、動物実験用の費用などがあまり生じなかった。また購入予定であった実体顕微鏡に関しては、他の顕微鏡や観察システムを工夫する事で代用した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、神経ファイバーを用いて初代培養神経細胞から作製した神経回路間の接続や、動物への移植実験などを行う予定である。
|